
高騰する人件費が自転車プロチームを圧迫 多くのチームが苦慮するスポンサー探し|ツール・ド・フランス2026
福光俊介
- 2026年07月19日
世界最大のサイクルロードレース、ツール・ド・フランスの2026年大会は第2週を進んでいる。フランスの大地をプロトンが進む様は美しく、劇的なドラマに興奮を覚える。華やかな勝負が繰り広げられる一方で、チームが抱える悩みにどうしても目が向きにくいのも事実。実は、ツールに出場しているチームの大多数で、スポンサー探しが難航している実情があるというのだ。
ツール出場チームの半数近くがスポンサー探し中
これは、あるチームのマネージャーが匿名で取材に応じた際に述べられたもので、「ツールに出場する全23チームのうち、最低でも10チームが長期的な資金確保のメドが立っておらず、タイトルスポンサー探しを行っている」という。さらには、そのうちの3チームは2026年限りでのチーム活動終了の可能性も出てきているといい、運営の難しさを改めてわれわれに知らせている。
タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツ・XRGや、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)がエースを務めるチーム ヴィスマ・リースアバイク、ポール・セクサス(フランス)が進境著しいデカトロン・CMA CGM チームなど、一部のチームは年間予算として4000万ユーロ(約80億円)を投じているとされる。彼らの活動は充実の一途だが、他のチームはそこまでの予算組みはできておらず、近年の活動スタイルに見合わない状況になりつつあるという。

チーム予算の大部分が選手・スタッフへの給与で、年々高騰している選手への支払いが資金を圧迫していると言われる。必要となるお金が多くなることから、スポンサー探しのライバルがサッカーや、F1に代表されるモータースポーツとなっている点も興味深いところだ。
サラリーキャップ制度の導入は難しいとの見方
資金繰りに苦慮するチームの具体例も上がってきている。
スペインの雄・モビスター チームは、同国の大手通信会社・テレフォニカ社と2029年までのタイトルスポンサー契約を結んでいるが、同社が早期の契約解除を求めていると一部メディアで報じられた。また、チーム ジェイコ・アルウラーでは実業家のジェリー・ライアン氏が2027年にも資金提供を終了すると明言。同様の事案は、他チームにも起きていると推察されている。

UCI(国際自転車競技連合)が集計したデータによれば、2026年シーズンにおけるUCIワールドチームの平均予算はおおよそ3200万ユーロ(約60億円)で、3年前と比較すると600万ユーロの上昇が見られている。加えて、チームが年間で得られる収入の87%がスポンサー企業からの出資であることが分かっており、欧米のサイクルメディアがチーム運営の不安定さを指摘している。
こうした状況を打開する一手として、ツールのレースディレクターを務めるクリスティアン・プリュドム氏らが「サラリーキャップ制度」の導入を提唱している。これは1チームあたりの給与総額の上限を設定するもので、資金の豊富な一部チームにばかり有力選手が集まらないようにするための仕組みでもある。現在のロードレースシーンは「資金力=チーム力」に限りなく近い状況にあり、それを変えていくシステムづくりが必要だとの意見は多い。ただ、それがチーム運営の不安定さを根本的に解決する手立てと捉えることも難しく、現実的ではないとの見方が多い。
それよりは、ツールやジロ・デ・イタリアといったビッグレースに出場したチームへの収益の分配など、レース主催者との協力体制を構築する方が先だとチーム関係者は主張する。

スーダルが新スポンサーを獲得
ツール1回目の休息日だった7月13日、スーダル・クイックステップが新たなタイトルスポンサーとして、ベルギー発祥のシューズブランド・セーフティジョガー社を2027年シーズンより迎えると発表。チーム名は「スーダル・セーフティジョガー」となる見通しだ。

サイクルロードレース市場が厳しい中、新規タイトルスポンサーを得た同チームはかなり幸運といえるだろう。果たして、この先新規スポンサーを獲得し、チーム継続ならびに運営の充実化を図れる組織はどの程度あるだろうか。
サイクルロードレースの持続可能性がいま一度問われている。
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