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留目夕陽が独走でプロトンを粉砕し全日本王者に!女子は亡き父へ捧げる小林あか里が大会2連覇

新潟県南魚沼市を舞台に開催された「第94回全日本自転車競技選手権ロード・レース」。大会2日目となる6月28日は、国内ロードレースの頂点を決める女子エリート+女子U23、そして男子エリートのレースが開催された。男子エリートは最終周回に飛び出した留目夕陽(愛三工業レーシングチーム)が独走で念願のナショナルチャンピオンジャージを獲得。女子は小林あか里(カッセイエン・フィーツ・ハイスサイクリングチーム)がライバルたちとの激しいサバイバル戦を制し、亡き父に捧げる大会2連覇を達成した。

女子エリート+女子U23:小林あか里が下りで勝負を決め連覇達成

大会2日目の幕開けを飾る女子エリート+女子U23カテゴリーは、午前8時にスタート。コースはJBCF南魚沼ロードレースでお馴染みの三国川(さぐりがわ)ダム周回コース(1周12km)。前日までの雨から一転、晴れ間も覗く曇り空の下、気温20度という絶好のコンディションで34名の選手たちが7周回・84kmのレースへと駆け出した。

 

地元新潟県出身で滋賀県から淡路島へと練習環境を移して今大会に挑んだ阿部花梨(イナーメ信濃山形)が「エントリーリストを見たときに、去年の優勝者やトラックのオリンピック代表選手などがいて、去年よりもレベルが高いレースになると思っていました。地元のコースでどこまで走れるか挑戦的なレースをしたかった」と語るように、レースは序盤から激しいペースアップによってサバイバルな展開となる。

2周目の登り区間で、集団は早くもディフェンディングチャンピオンの小林あか里(カッセイエン・フィーツ・ハイスサイクリングチーム)をはじめ、内野艶和(HPCJC・ブリヂストンアンカー)、石田唯(TRKWorks)、阿部、木下友梨菜(鈴なり妖怪)、田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)の6名に絞り込まれた。

さらに3周目の登りで先頭は小林、内野、木下の3名に。後方は石田、阿部、田中の3名による追走集団となり、完全にレースは2つのグループに分断された。この展開を作った木下は、「5分の登りがあるので、自分が得意な登りで2周目、3周目くらいで人数を絞り、ラスト3周くらいで抜け出したいと考えていました」と狙いを明かす。

先頭の3名は、互いの脚を削り合う緊迫した展開のまま終盤へと突入する。しかし、勝負が動いたのは最終周回の登りに入る手前だった。優勝候補筆頭と目されていたヒルクライマーの木下がここで無念のペースダウン。「小林選手と内野選手から抜け出せず、5周目の途中から脚が攣りだしてしまい、最終周回の坂の手前でどうしようもない状態になってしまいました。下りがあまり得意ではないので自分のペースで行き、離れては脚を使って追いつくことを繰り返してしまったのも響きました」と振り返る木下は優勝争いから脱落。「今後は乗鞍ヒルクライムと、9月にロードレースに出場する予定なので、そこに向けてもう一段、二段と力をつけて勝負したい」と先を見据えた。

これで勝負は小林と内野の一騎打ちに。「上りは木下選手、フラットのスピードは内野選手が強かったので、自分が抜けられるとしたら下りしか分がないと思っていました」という小林が幾度となくアタックを繰り出すものの、内野がしっかりと食らいつく。「上り7周でどこまでついていけるか分からなかったのですが、2人まで残れて自分でもびっくりしました」と語る内野だったが、勝負の明暗を分けたのは最終のダウンヒルだった。

「初めてのコースでしたが、冷静に展開を作れました。最後はもう全く余裕がなくて、ラスト1周は脚が攣りまくっていましたが、追いつかれたら仕方ないと思い、一か八かで踏み切りました」という小林が、三国川ダム特有のテクニカルな下りで内野を突き放すことに成功。対する内野は、「やっぱり下りコーナーがまだまだ下手くそで、最後のゴール前もバテバテで全然踏めず、自分の課題だとすごく感じました」と唇を噛んだ。内野はこの後1ヶ月半、昨年も所属したスイスのUCI女子コンチネンタルチーム、ネクスティスに参加してさらなる経験を積む予定だ。

リードを奪った小林はそのまま単独でフィニッシュラインに飛び込み、見事に全日本2連覇を達成。MTBやシクロクロスでも活躍した彼女だが、先月、競技生活を一番近くで支え続けた父・昌樹氏が膵臓がんで逝去した。レース後、小林は「来月、地元の長野県安曇野市で、父親がゼロから作ったコースで開催されるマウンテンバイクの全日本選手権に出る予定です。先月亡くなった父が、最後の最後まで『マウンテン走って』と言っていたので、走ることで感謝を伝えたいです。今年は後半戦を国内で活動し、来年またヨーロッパに挑戦するための準備期間にしたいと思います」と、亡き父への思いと決意を口にした。

後方の追走グループでは、スプリントを制した石田が全体の4位に入った。「本当はマウンテンバイクのアジア選手権に出るつもりでしたが事情で行けず、ロードに切り替えて日本一になろうという気持ちでした。前の3人とは1つレベルが違ったと感じましたが、追走の3人の中では絶対に頭を獲るという気持ちで走り、何とか4位になれました。1ヶ月後の全日本マウンテンバイクで日本一になれるよう頑張ります」と力強く語った。

そして全体の5位に入り、見事女子U23の全日本タイトルを獲得した田中は、「2周目はついていけたのですが、3周目でドロップして力の差を感じました。最後、石田選手にアタックされた時はもう脚が攣りかけていてスプリントにつけず悔しかったです。でもアンダーのチャンピオンという目標は達成できたので、来年はもっと強くなってエリートの1番を獲れるように頑張ります。今年チャンスがあれば海外レースで学びたいです」と喜びを語った。また、阿部は「序盤から力の差は感じましたが、落ち着いて出し切れる力は出せたと思います。目標は国体に選ばれ、世界選手権やオリンピックを目指せる選手になることです」と充実した表情を見せた。

男子エリート:プロトンを打ち砕いた留目夕陽の鮮烈なアタック

午前11時30分にスタートした男子エリートは、15周回・180kmの長丁場。空はすっかり晴れ渡り、気温は27度まで上昇。日差しと蒸し暑さが選手たちの体力をじわじわと奪っていく過酷なサバイバルレースとなった。

1周目から散発的なアタックが繰り返されるなか、2周目の登りで中村圭佑(ヴィクトワール広島)が抜け出し、平坦区間で阿部嵩之(ヴェロリアン松山)と高木三千成(稲城FIETSクラスアクト)が合流して3名の逃げ集団が形成される。しかし決定的な逃げにはならず、レースは再び集団に。

「前半から少しゆったりとしたペースだったので後半に向けて備えていました」と振り返るのは個人タイムトライアル全日本チャンピオンの今村駿介(ロット・グループワンティ)。新城幸也(ソリューションテック・NIPPO・ラーリ)も「サバイバルな展開にはならなくて、序盤からすごく緩いペースになってしまったので、ずっと集団で待機してどこかのチームがレースを始めるのを待つしかありませんでした」と語るように、集団内には独特の緊張感が漂っていた。

ホビーレースで今シーズンほぼ負けなしの大前翔(Roppongi Express)は「全日本はお祭りみたいなレースだと思っているので、アマチュア選手としてプロ相手にどこまでできるかなという『加点方式』で全力出し切りました」と気負いなく走り、林原聖真(シマノレーシング)は「前半はチームメイトが集団をキープしてくれて前でクリアし、脚を消費しない立ち回りでした。キナンが逃げるまで集団がカオスでアシストを上手く活かせず苦戦しましたが、途中から落ち着きました」と集団内で立ち回る。

決定的な動きが生まれたのは11周目だった。集団が活性化し、山本元喜、橋川丈(ともにキナンレーシングチーム)、留目夕陽(愛三工業レーシングチーム)、本多晴飛(VC福岡)、今村、大前という強力な6名が抜け出した。

「優勝を狙うチームが揃っていたんで行けるかなと思ったんですけど、全然長い時間は逃げられませんでした。そこで結構脚がきてしまい、最後は余裕がなかったです」と今村が語り、「自分から動かず前待ちの展開が良いと思っていて、留目が中盤行った時に自分のアシストをしようと思ってついていったら抜け出せました。ただ、集団のメンバーが良すぎてすごい追ってきちゃいましたね」と大前が振り返るように、この逃げは長くは続かず12周目に吸収。

しかしその直後、カウンターで山本元喜が単独アタック。一時は集団とのタイム差を1分にまで広げる独走劇を見せた。「小石(祐馬)と丈(橋川)を終盤のエースに据え、自分がフレキシブルに動いて逃げを打ったり他チームを消耗させる作戦でした。ラスト4周で少し距離はありましたが、エース2人を集団に残す動きとして概ね作戦通りでした」と山本元喜。

山本の逃げも14周目に吸収された直後、混沌とした集団から鋭く飛び出したのは新城だった。新城が単独先頭のまま最終周回へと突入する。「強力な逃げで後ろが苦しむような展開にはならず、上り勝負になってしまいました。優勝するには独走が一番いいし、最後の登りまで待っているとアタック合戦に参加できないので、残り15キロぐらいのところで抜け出すタイミングがあり、可能性に挑戦しました」と新城。火曜日にはヨーロッパに戻るベテランの意地を見せた。

しかし、最終周回の厳しい登りで、後方から猛追した留目夕陽が単独で新城に合流。勢いそのままに新城をパスし、一気に独走態勢に持ち込んだ。「残り2周ほどでアタックしたときは、集団の反応も鈍く、みんなかなり消耗しているように見えました。自分はスプリントが得意ではないので、独走で勝つことを狙っていました。『ここなら行ける』と感じて踏み込み、そのまま勝負を決めることができました」と留目は勝負勘を研ぎ澄ませていた。

後方の追走集団が牽制し合う間にも、留目は力強いペダリングでタイム差を拡大。ホームストレートでタイム差を聞いて初めて勝利を確信したという留目が、独走でフィニッシュラインを駆け抜け、両手を大きく天に突き上げた。

「チームとしては『日本一のジャージを持ち帰る』ことを目標にレースへ臨み、人数の多さを生かしながら有力チームの動きを警戒していました。このタイトルは自分ひとりでは獲れませんでした。アシストがあったからこその勝利です」と、念願の男子エリート全日本王者戴冠を喜んだ。

2位争いは追走集団のスプリントとなり、金子宗平(群馬マンモスレーシング)がプロを退けて飛び込んだ。「怪我(鎖骨骨折)をしていて前半から速いペース展開はちょっと嫌だったので、落ち着いて後半勝負と決めていました。小集団スプリントがいいなと思っていて、留目選手は圧倒的だったので諦めましたが、その後ろはしっかり獲れました」と充実感を漂わせ、後半戦の大事なレースを見据えた。

3位の岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)は「各選手が攻撃を仕掛ける、最後まで展開の読めないレースでした。若い留目選手がチャンピオンになったことは、日本のロードレース界にとっても大きな意味があると思います」と新王者を讃えた。

追走集団で奮闘した選手たちもそれぞれの思いを抱えフィニッシュ。4位の孫崎大樹(ヴィクトワール広島)は「要所要所で優勝を狙う走りができました。過去最高の仕上がりで自信もあり、数少ないチャンスだと思って狙っていたので悔しいですね。最後は勝った留目選手に王者の走りを見せつけられ、シンプルに力負けしました」と悔しさを滲ませ、秋のUCIレース祭りとリーダージャージ争い中のJプロツアーでのリベンジを誓った。

「ただただきつくて耐えるだけのレースでした。上りをこなして平坦で追いつくのを残り3周ずっと繰り返していました。上りスプリントなら自分の脚はトップクラスだという自負はあったのですが」と振り返る山本哲央(チームUKYO)は6位。林原は「上りで自分の得意なペースで刻んでいい動きをしたかったのですが、トップの選手たちとはちょっと脚が劣っていて、最後は集団でゴールしました」と15位でレースを終えた。また、14位の今村は「またヨーロッパに戻って少しでもいい成績を出せるように頑張ります」と次なる戦いへ目を向けた。

リザルト

男子エリート(180.0km)

1位 留目 夕陽(愛三工業レーシングチーム) 4時間33分55秒
2位 金子 宗平(群馬マンモスレーシング) +32秒
3位 岡 篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン) +34秒
4位 孫崎 大樹(ヴィクトワール広島) 
5位 谷 順成(Astemo宇都宮ブリッツェン) 
6位 山本 哲央(チームUKYO) 
7位 阿曽 圭佑(スパークルおおいたレーシングチーム)
8位 織田 聖(愛三工業レーシングチーム)
9位 佐藤 光(チームサイクラーズ・スネル)
10位 橋川 丈(キナンレーシングチーム) 

女子エリート+女子U23(84.0km)

1位 小林 あか里(カッセイエンフィーツハイスサイクリングチーム) 2時間20分52秒
2位 内野 艶和(HPCJC・ブリヂストンアンカー) +7秒
3位 木下 友梨菜(鈴なり妖怪) +4分12秒
4位 石田 唯(TRKWorks) +7分31秒
5位 田中 麗奈(IGNTZONE Racing Team) +7分36秒(※女子U23 1位)
6位 阿部 花梨(イナーメ信濃山形) +9分29秒
7位 松井 妃那(鹿屋体育大学) (※女子U23 2位)
8位 三谷 優空(鹿屋体育大学) +9分32秒(※女子U23 3位)
9位 佐藤 恵美  +9分36秒
10位 竹内 清子(TeamSHIDO) +9分41秒

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PROFILE

せいちゃん

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稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている

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