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「売れるもの」より「心が動くもの」を。愛知・清須『やしの実』が提示する個性派リサイクル店の作り方 [名古屋]

愛知県名古屋市、そしてその外縁に位置する清須市や一宮市。この一帯は古くから「ものづくりの街」として栄え、同時に「良いものを手入れして長く使う」という堅実なリサイクル文化が深く根付いてきた土地だ。

全国的に知られる古着の街、名古屋・大須が、日本最大級のリユースデパート「コメ兵」の創業地であることは偶然ではないし、東海地方を中心に20店舗以上の直営展開する「買取王国」、県下最大級の売り場面積を誇る「買取市場」、インテリアや住宅設備の買取りも引き受ける「再良市場」など、ローカルにあって実力派のリサイクルショップも多く、店舗用の什器から家庭用の廃品までセコハン市場が活発なエリアである。

そんな成熟したリユース文化圏の中で、オープンから25年、独自の審美眼を貫き通す店がある。清須市春日(はるひ)高札に店を構えるリサイクルショップ「リサイクルショップ やしの実」だ。店舗外観は、往年のリサイクルショップに見られる倉庫然として佇まい、初見ではなかなか入りにくい雰囲気があるものの、実はオーナーのセンスで選びぬかれた商品の数々に客足は絶えず、遠く海外からこの店を目当てに訪れる者も少なくないというから驚きだ。

県道に面し、クルマで訪れやすい倉庫のような佇まいの店舗外観。

 

状態の良い売れ筋商品を手前に陳列するような今どきのリサイクルショップとは一線を画し、昭和レトロな家具、雑貨、照明、インテリア、ジャンク品やブロカント(古道具)を中心としたセレクトショップといった趣だ。

インテリアへの純粋な情熱と、25年間の「目利き」の軌跡

オーナーがこの世界に足を踏み入れたのは2001年のこと。もともとはインテリアを愛し、インテリア関連のメーカーやコーディネーターの道を志し、インテリア業界へ。しかし、組織の中で直面したのは、デザインよりも売り上げの数字が最優先される現実だった。

「インテリアが好きで業界に飛び込んでみたものの、そこはどうしても数字がメイン。自分が本当にやりたいこと、良いと思うことよりもまずは売り上げが最優先。そこに自分は違和感を感じてしまって、だったら自分で納得のいくことをやりたいと思ったのが始まりでした」

こうして夢を抱いて独立、最初に掲げたのは「椅子のリメイク販売」だった。古い椅子を買ってきては丁寧に直し、付加価値をつけて世に出そうとした。だが、一脚を仕上げるのにかかる時間と労力、そして販売価格を天秤にかけた時、ビジネスとしての壁にぶつかる。

「一脚にどれだけ時間をかけて、いくらで売るんだと考えた時に、これは商売として立ち行かないなぁと。そこで、まずはモノの流れを知るために、リサイクルショップに飛び込んだんです」

修行先は、事務用品から厨房機器、食器まで、あらゆる実用品が雑多に集まる現場だった。がむしゃらに働き、店長を任されるようになったころ、店主はそこにある「光」を見い出すことに。

「いわゆる事務機や食器が並ぶ中に、ごく稀に”変わったもの”を求めるお客様がいました。今どきの大量生産品よりも、古いものの方が作りやデザインに凝ったものが多く、そこに気づく人が必ずいる。2001年に自分の店を始めるにあたっては、そうした自分の感性に触れるもの、自分が本当に『欲しい』と思える、そういうものをメインに据えることにしました」

日本の60’sに宿る「アメリカン・モダン」の正体

店内に足を踏み入れると、いわゆる昭和レトロな什器や小物がコーナーごとに絶妙にカテゴライズされディスプレイされている。ただし、それが純和風かと問われれば違う。店内には海外製品も散見されるものの、ほとんどが日本製であるにも関わらず、時代も国境も分からなくなるような多国籍な混沌とした雰囲気だ。日本の古い扇風機、絶妙な丸みを帯びたスチール製のレターケースなど、どこかアメリカのミッドセンチュリーを思わせようなモダンな格好良さも感じる。

「仕入れは基本的に国内です。海外で購入されたものを不用品として買い取ることもありますが、基本的にアメリカの現地で買い付けしたり、取り寄せるようなものはありません。実は、日本の60年代の製品は、当時のアメリカ製品のパクリというか(笑)、強い影響を受けて作られていたものが多い。その時代の日本のプロダクトを丁寧に選んで並べると、自然とアメリカンチックな空気感が生まれるのです。この時代のモノにはそういう面白さがありますね」

この「和製アメリカン」とも呼べる独特のセレクトは、言葉の壁を越えて伝わる。

「イギリス人やアメリカ人のお客様が来ると、驚くほど喜んでくれる。『自分の国にも似た雰囲気の店はあるが、ここには日本にしかない素晴らしいデザインがある』と。彼らが食いつくのは、日本独自の引き出しの作りだったり、柳宗理のプロダクトだったりする。そうした『日本にしかない良いもの』が混ざり合うことで、世界でもここにしかない景色が生まれているのだと思います」

特にオーナーが目を細めるのは、古い「プラス(PLUS)社」のレターケースだ。「今の現行品はカクカクしているが、古いものは少しだけ丸みがある。人の手が入っているというか、天板の重みも全然違う。こういうディテールにこそ、時代を超えて残る価値が宿っていると思うんです」

元々のインテリア好きという素性もあるが、オーナー氏の昭和レトロな製品に対する知見、広範な知識量が歴史的価値のある逸品から、名もなき名品がこの場所に集まる理由の一つだ。

ところで、リユース文化が盛んな地域性とはいえ、取り扱っている商品の特殊性を踏まえれば経営は一筋縄ではいかないようにも思える。

「今の時代、InstagramをはじめSNSという市場があります。入荷した商品をアップすれば、全国から時には世界からもDMで問い合わせがあります。最近ではなぜか台湾からのお問い合わせが多く、先日は実際にこの地に買い付けに来られました。言葉の問題もスマホの翻訳でなんとかクリアできます。そういう意味でお店の立地の問題はある程度はクリアできる。あとは、運営を僕がひとりでやっていることもありますね。逆によく同業者は人を雇ってやっていけてるなぁと。仕入れからリペア、店番に発送業務、時には引っ越し業者のように、不用品の買い取りで出張することもあります」

全業務を一手に引き受けること、それがこの店に並ぶラインナップに統一されたセンスを与えていることは間違いないだろうし、扱っている商品がアナログな一方で、ITをフル活用している点も今ドキの個人店の形といえる。

大手がやらないことをやる。「名古屋リサイクル文化」の裏側

名古屋エリアは、今や大手中古ショップの激戦区だ。オーナーが店を始めた頃に比べ、2000年代以降は大型のフランチャイズ店が一気に増殖した。

「大手が参入し、メルカリやヤフオクで誰もが相場を即座に調べられる時代になった。でも、僕はそれでいいと思っています。価値がわかっている人が必ずしも出品しているわけではないからこそ、掘り出し物もみつかります。ただ、ウチのような小規模な店は、『大手がやらないこと、やれないこと』をやりたい。効率や回転率だけを追うのではなく、1人でコツコツと、自分の琴線に触れるものだけを仕入れる。利益優先では、この濃密な空気感は作れないのです」

店内には、廃盤になった工業用の重厚なライトや、明治・大正時代の希少な色ガラスの棚、さらにはモペットや名車カブなどの原付バイクが並んでいたこともあるという、取り扱う商品ジャンルは何でもあり、仕入れルートを問えば、「行き当たりばったりだ」とオーナーは笑う。

「25年続けている中で、ずっと繋がっている業者はいません。解体屋さんも含め、その時々で繋がった人から面白いものが出てくる。例えばある時、古いデパートの包み紙が貼られた棚を見つけて、開けてみたら中から素晴らしい色ガラスが出てきたりする。そういう一期一会の縁によって、この店ならではのラインナップが作られていると思うのです」

ここにおいて、改めて店舗がここに立地する理由を感じる。店舗に並ぶ商品は、愛知県内で生産されたものが多く、モノづくりの街ならではの出物がこの店には多く集まる。店舗什器、工場の照明や企業の応接セット、ベルベット生地を張ったスナックなどに使われる椅子、こうした商品は都会の洒落たリサイクルショップではなかなかお目にかかれないだろう。

「今でこそ人気となっていますが、場所柄、『飛騨家具』、『カリモク』など愛知・岐阜界隈の家具メーカーは多く扱ってきました。『カリモクKチェア』なんかは4トン車一杯に仕入れてきたこともあります。当時は誰からも見向きもされないようなありふれた家具でした。ウチの場合、普通の人にとって不要でも、ちょっとこじらせた、オタク的価値観をもっている人の琴線に触れる、探し物が見つかります。家具以外だと航空産業が盛んだった愛知は、かつてローカルの自転車メーカーもあり、旧い自転車なんかも人気ですよ」

実際、ユーザーはそうしたこだわりが強い客層が中心だ。

「このレトロポップな食器棚も北陸の方がSNSを見て『買い取ってくれますか?』と連絡いただいて仕入れたものです。自宅のインテリアとして購入される方の他、最近は店舗の改装などでまとめて購入いただくことも多いです」

SNSの普及で誰もが情報発信が容易になった。小規模な店舗でも希少性のあるものなら、それを求めてこの地に客は訪れる。さらに愛知という立地だからこそ集まる品揃えでもあるわけだ。

東京から2時間弱。宿場町の面影を残す「清須」へのショートトリップ

『やしの実』が位置する清須市春日高札は、かつての宿場町、清洲宿の面影を微かに残す落ち着いたエリアだ。新幹線を利用すれば、東京からも驚くほどスムーズにアクセスできる。

アクセス: 東京からは東海道新幹線で「名古屋駅」へ(約1時間40分)。JR東海道本線に乗り換え、わずか2駅の「清洲駅」で下車(約7分)。駅から店舗までは徒歩で約30分。タクシーを利用すれば数分の距離だ。名古屋からレンタカーを利用するか、あるいはちょっとしたものならハンドキャリーしてもいいだろう。

「駅から歩くと少し距離はありますが、このあたりはものづくりの町。観光地向けに整えられた場所では得られない、日常の中に潜む歴史やデザインを見つける体験を楽しんでほしい。わざわざ新幹線を使って来てくださるお客様もいるが、その価値があるだけのモノを揃えていると自負しています」

冬になれば、オーナーが完璧に整備したアラジンのストーブが、リサイクルショップの枠を超えた規模でずらりと並ぶ。現行品では80万円を超えるハーマンミラー社の「エグゼクティブチェア(タイムライフチェア)」が、驚くほど良い状態で顔を出すこともある。

「自分がカッコいいと思うか。それだけが基準です。僕自身は決して人気者ではないけれど(笑)、このモノたちが持つ力は本物だと思います」

オーナーとの対話は、効率ばかりを求める日常に、確かな手触りと「モノを慈しむ」喜びを与えてくれる。自分だけのスタンダードを探しに、次の週末は新幹線に乗って、清須の『やしの実』へお気に入りを買い付けに訪れてはいかがだろう。

 

infromation

やしの実

住所:愛知県清須市春日高札66

☎︎052-409-8218

営業:13〜19時

定休日:水曜日

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『タビノリ』は、旅の楽しさは、旅のはじまりである「移動」から、旅前の準備、ふとした寄り道、車窓から見つけるお気に入りの風景など、旅の余白に目を向け発信していくメディアです。また、旅をその周縁のものと組み合わせ、定番の旅先や新しい旅の提案などを仕掛けていきます。

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