
初開催のサイクリングEスポーツ全日本選手権 圧倒的スプリントの本田と独走の山本が初代王者に
せいちゃん
- 2026年08月16日
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8月16日、東京都板橋区高島平の「eスポフィールド」にて、記念すべき「第1回全日本自転車競技選手権大会 サイクリングEスポーツ 決勝」が開催された。オフラインでトップ選手が一堂に会した熱戦の末、男子オープンは本田純盛(Restart p/b Alex Coh)が、女子オープンは山本侑果(High Ambition)がそれぞれ優勝を飾り、栄えある初代チャンピオンジャージに袖を通した。
厳格なルールの下、オフラインで実施された全日本選手権
今年初開催となったサイクリングEスポーツの全日本選手権。7月25日に行われたオンライン予選を勝ち抜いた選手たちに、昨年のUCIサイクリングEスポーツ世界選手権に出場した日本代表選手(ワイルドカード)を加えた精鋭たちが、決戦の舞台である「eスポフィールド」に集結した。

eスポフィールドは、PCなどの精密機器を備えるeスポーツ用施設。普段はオンライン上で顔を合わせる選手たちが、実際に横一列に並んでペダルを回すという、全日本選手権ならではの緊張感に包まれた。
本大会は「公平性」を極めて重視している。ブリーフィング後に行われたのは、使用するスマートトレーナーを決める「くじ引き」だ。用意された機材はすべて主催者支給の「Wahoo KICKR v6」に統一されているが、機材ごとのわずかな精度のズレや、位置による照明の明るさ、エアコンからの距離など、微細な環境の違いが存在する。このくじ運も勝敗を左右する重要な要素となった。



身体計測を厳密に終えた選手たちは、自身が持ち込んだ愛車をトレーナーにセットする。プラットフォームである「Zwift」のセットアップもライダー自身で行うが、会場内には大量のセンサー電波が飛び交っており、自身のセンサーをペアリングするのに苦労する選手の姿も見られた。徹底したデータ管理のため、レース後にはサイクルコンピューターで独自に記録した「セカンダリデータ」の提出も義務付けられている。
男子オープン:厳しいマーク戦と圧倒的パワーを見せた本田純盛
13時にスタートした男子オープンは、36.8km(Richmond “Cobbled Climbs” 9.2km×4周)のコース。1周回に短い登りが3回、計12回のパンチ力のある登りが用意されたタフなレイアウトだ。

レースは10名の精鋭による牽制状態が続く中、長年フランスでのクラブチーム所属経験を持つ実力者、永山貴浩が積極的に動いた。下りや平坦でもペダルを緩めず、淡々とハイペースを刻んで幾度となく単独アタックを試みる。
ワイルドカードで出場し、実力者として警戒されていた高杉知彰(NEXT TEST SET)も抜け出しを図ったが、決定的な逃げを打つことはできなかった。高杉はレース後、「いつものZwiftレースは30人ほどで走ることが多いが、今日は10人しかおらず実力も拮抗していたため、思うような展開にできなかった。自分はスプリント勝負では勝てないので抜け出して逃げ切りたかったが、10秒弱抜け出しても1対9では集団が踏めば追いつかれてしまう。自分と本田はEスポーツで認知されていることもあり、『高杉がいったら追うよね』と厳しくマークされていて、かなり難しいレースだった」と振り返った。

勝負は最後の登りを越えた後のスプリントへ。ここで完璧な立ち回りを見せたのが、本田純盛だった。「逃げが決まらなそうだったので、自分からは展開を作らず最後のスプリントに備えていた。Zwift特有のドラフティングなどを存分に発揮して、集団内でいかに脚を残すかに徹した」という本田は、残り300mから一気に爆発的なロングスプリントを開始。圧倒的なパワーで後続をみるみるうちに引き離し、2位の伊藤大地に3.65秒というスプリントとしては大差をつけて圧勝した。自身もスプリントに自信を持っていたという伊藤は「先に(本田に)行かれてしまって悔しい2位だった」とその強さに舌を巻いた。


「日本のZwiftレースではあまり負けたことがない」という絶対的な自信を証明した本田は、大阪府大阪市出身の24歳。現在は東京都稲城市の自転車店「TRYCLE」で働きながら競技に取り組んでいる。「今年はEスポーツに絞って活動している。次の目標は世界選手権の決勝に進出すること」と語る。
また、8位となった高杉も「10月の準決勝(セミファイナル)を勝ち抜き、12月に集合開催される世界選手権の決勝に進出したい」と語っており、国内トップ選手たちの視線はすでに世界へと向けられている。
女子オープン:予選の雪辱を果たした山本侑果が独走勝利
15時30分にスタートした女子オープンは、26.4km(Innsbruckring 8.8km×3周)で争われた。4名がエントリーしていたものの1名がDNSとなり、佐藤恵美、山本侑果、中島深希の3名での決勝レースとなった。

少人数でのレースは駆け引きが重要になる。1周目の勝負所である登り区間「レッグスナッパー」の手前から強烈なペースアップを仕掛けたのは山本だった。「予選の同じコースでは、登りの手前から佐藤さんにペースを上げられてちぎられてしまったので、今回は自分がそれをやり返そうと思った」と語る通り、この猛烈な牽きによって予選トップ通過の佐藤が脱落する。

その後は中島と2名でのマッチアップに。中島とローテーションをしながらレースを進行。そして最終周回、最後の登りで山本が満を持してアタックを仕掛けると、中島を一気に突き放す。そのまま10秒以上のリードを奪い、フィニッシュラインまで見事な独走を飾った。

初代女王に輝いた山本は茨城県土浦市出身の26歳。もともと陸上競技出身で、東京都立大学時代のインカレサークル「Afro-Q」でトライアスロンに取り組んだ経歴を持つ。現在はロードレースをメインに活動しており、昨年は国民スポーツ大会のロードレースで7位、UCIグランフォンド世界選手権で年代別12位、今年もチャレンジサイクルロードレースで3位に入るなど、実走でも国内アマチュアトップクラスの実力を持つライダーだ。
解説・別府史之氏「世界を意識するトップ選手たちに期待」

本大会で実況のJustive7氏、宇佐美颯基氏とともに解説を務めた元プロロードレーサーの別府史之氏は、熱戦を振り返り次のように語った。
「Eスポーツは絶対値が全ての世界。今日集まった国内のトップ選手たちは、国内だけではなく世界を意識して走っているのが非常に良いと感じました。こうした活動を続けていくことで、日本から世界に通用する選手が必ず出てくると期待しています」

第1回大会として歴史的な一歩を踏み出したサイクリングEスポーツ全日本選手権。バーチャルとリアルが融合した新たな自転車競技の形は、今後のさらなる発展を予感させるものだった。
リザルト
男子オープン – 決勝(36.8km)
1位 本田 純盛(Restart p/b Alex Coh) 54分39秒
2位 伊藤 大地(Equipe Tohoku) +3.65秒
3位 下川 達也(EMU SPEED CLUB) +5.49秒
4位 久保 敦(Team ZWC) +5.69秒
5位 永山 貴浩 +5.74秒
6位 千原 一馬 +7.91秒
7位 霜出 祐輝(TRYCLE.ing) +14.80秒
8位 高杉 知彰(NEXT TEST SET) +15.93秒
9位 遠藤 健太(TEAM ZWC) +28.79秒
10位 豊田 勝徳(TREK MINIBUS RACING TEAM) +50.33秒
女子オープン – 決勝(26.4km)
1位 山本 侑果(High Ambition) 41分42秒
2位 中島 深希(EVO Cycling Club) +10.68秒
3位 佐藤 恵美 +59.23秒
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文:相原晴一朗 写真:井上和隆
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PROFILE
せいちゃん
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている



















