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ツアー・オブ・ジャパン富士山ステージを特等席で体感! 小山町公認「バス&コースウォーク2026」が生み出した熱狂

5月29日、日本最大級の国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)」のクイーンステージとして知られる富士山ステージで、小山町公認の観戦イベント「バス&コースウォーク2026」が開催された。本記事では、ふじあざみラインの走行体験や豪華ゲストとの交流、ゴール観戦の魅力、そして地元・静岡県小山町の思いを紹介する。

新城幸也のチームメイトがワンツーフィニッシュを決めた富士山ステージ

舞台は、最大勾配22%を誇る国内屈指の激坂「ふじあざみライン」。総合争いを大きく左右する難関コースとして知られ、毎年数々のドラマが生まれる場所だ。

アザミラインに入ると、集団は一気に絞られ、新城幸也が所属するソリューションテック・ニポラーリが主導権を握る。カミール・ボヌーの牽引からマテオ・ファブロがアタックを決め、そのまま独走でフィニッシュ。総合首位に浮上した。

富士山は今年もまた、ツアー・オブ・ジャパンの勢力図を書き換える舞台となった。

一方で、極限の登坂ならではのドラマも生まれていた。VC福岡の本多がパンクしたままゴールを目指す場面では、沿道の空気が一瞬変わる。

異変に気づいたキッズたちの声が上がり、そのまま自然と大きな応援へと変わっていく。トラブルの中でも走り続ける選手と、それを間近で目撃する観客。その距離の近さこそが、このステージの大きな魅力でもあった。

富士山ステージ公認ツアーだからこそ味わえる特別な体験

今回は、TOJと小山町が公認する観戦ツアーが実施された。このツアーは、富士山ステージを担当する静岡県小山町の「ゴールを観客で埋め尽くし、ツール・ド・フランスの山岳ステージのような熱狂を生み出したい」という思いから企画されたものだ。

このため今年の富士山ステージでは、表彰式の会場をゴール地点へ変更。死力を尽くしてフィニッシュする選手たちの姿を間近で見届け、そのまま歓喜の表彰式まで観覧できる、ファンにとって理想的な観戦環境が整えられた。

レース当日のふじあざみラインは厳しい交通規制が敷かれ、一般観客が自由にコースへ立ち入ることは難しい。しかし、このツアーでは専用バスでゴール付近までアクセスし、交通規制開始直前までコースを歩いて登ることができる。

希望者はそのままバスで移動することも可能だが、多くの参加者は選手たちが駆け上がる激坂を自らの足で体感。テレビや配信だけでは伝わりきらない斜度の厳しさを、自らの身体で味わっていた。

杉浦さん、佐野さん、今中さん、と豪華ゲスト共に観戦

同行ゲストも豪華だった。近代ツール・ド・フランス日本人初出場の今中大介さん、2014年全日本ロードレースチャンピオンの佐野淳哉さん、そして東京・パリの両パラリンピックで金メダルを獲得した杉浦佳子選手。

レジェンドたちと語らいながらコースを歩く時間は、このツアーならではの特別な価値となっていた。

今回特筆すべきは、観戦体験を支える運営の完成度だ。バスは2台体制で運行され、参加者はゆとりを持って移動。帽子や地元のお茶が配布されるなど、ホスピタリティも充実していた。

安全面ではメディックイーストとサポートカーを配置。さらにプロフォトグラファーも帯同し、参加者の体験を記録する環境が整えられていた。

5合目では弁当とお茶も提供されるなど、長時間の観戦を快適に楽しめる配慮も万全。これだけの内容で参加費は2,800円。観戦のハードルを下げ、多くの人にロードレースの魅力を届けようとする設計思想が随所に感じられた。

ゲストも納得「体験としての観戦、いいところだけ歩かせてくれる」

今回のツアーの価値を最も端的に示していたのが、ゲスト陣の言葉だった。

元ツール・ド・フランス出場者の今中大介さんは、この企画を高く評価する。「いいところだけ歩かせてくれる」――その一言に、ツアー設計の本質が凝縮されている。

実際にアザミラインを歩くことで、斜度や距離といったコースの過酷さを身体で理解できる。一方で、すべてを歩かせるのではなく、最も負荷と魅力が凝縮された区間に限定することで、体験としての満足度を高めている。

観戦ポイントも的確に選ばれており、どこで見ればよいか分からない参加者でも迷うことはない。こうした構成を踏まえ、今中さんは「迷わず参加していい」と太鼓判を押す。

その空気を象徴する出来事もあった。

参加者の一人が持ち込んだのは、約30年前の今中さんの写真だった。

思いがけない“過去からの持ち込み”に、本人だけでなく周囲の参加者やスタッフもざわつく。

かつて誌面で見ていた存在と、同じ場所で言葉を交わす。その時間の連続性が、このツアーの体験価値をより深いものにしていた。

パラリンピック金メダリストの杉浦佳子選手は、別の側面からこの場の価値を語った。

レースにおいて観客は単なる“見る側”ではない。選手にとって観客の存在そのものが力となり、特にフィニッシュ後や表彰の場ではその意味がより強く表れる。「観客がいるだけで選手はうれしい」という言葉に加え、表彰式に人がいることの重要性にも言及した。

競技は結果だけで完結するものではなく、それを受け取る存在があって初めて成立する――その本質が示されていた。

佐野淳哉さんは、レースそのものの充実度に目を向ける。

今年の富士山ステージは、選手間の差が例年以上に詰まった展開となった。一度遅れた選手が後半で差を詰める場面も見られ、最後まで緊張感が途切れないレースだったと分析する。さらにツアーについても触れ、ゲストでありながら“参加者と同じ目線で楽しめた”と語る。

観る側と解説する側が分断されず、同じ空間を共有している点が印象的だったという。

三者に共通していたのは、今回の体験が単なる観戦にとどまらなかったという点だ。コースを知り、選手を近くで感じ、他の観客と時間を共有する。その積み重ねによって、観戦は“参加する行為”へと変わっていた。レースの外側にいたはずの観客が、いつの間にか内側へ入り込んでいく。今回のツアーは、その変化をはっきりと可視化していた。

ツアーの企画担当をしたGRサイクリングの山根ディレクターは、今回の成果を高く評価する。小山町が掲げた「5合目に観客を増やしたい」という目標に対し、参加者数は前年の約2倍に増加。ロードレース観戦というハードルの高い体験を、多くの人に届けることができた。

今後は導線や周辺施策の拡充も視野に入れており、さらなる発展が期待される。

地元チーム、レバンテフジ静岡のTOJに対する思い

地元チーム、レバンテフジ静岡はレース前から地域に入り込んでいた。小学校を訪問し、レースの意味や応援の仕方を伝える活動を行っていたという。

その成果はレース当日に現れた。「ゴール間際で、教えた小学生たちを見かけてうれしかった」

教えた応援が、確かに返ってくる。それは動員ではなく、積み重ねの結果だ。事前の働きかけが、そのまま現地の熱量になる。その循環は、このレースが“イベント”を超えて地域に根づき始めていることを示していた。

その一方、ホームステージである富士山ステージを迎えたこの日、指揮を執る二戸康寛監督はチームを代表して現状を語った。

今大会は若手中心の編成で臨んだが、レース序盤から状況は大きく崩れてしまった。アンダーカテゴリーの選手2名がタイムアウトとなり、山口が落車でリタイア。さらにサルマも同じ落車の影響で戦列を離れてしまい、主力を一度に欠く形となったことで、チームの戦力は大きく低下した。

加えて、レースの分岐点となったJPF京都ステージについても言及する。

アップダウンとテクニカルなコーナーが連続するこの区間で、想定以上に差が広がったことが響いた。当初描いていたレースプランは、この時点で修正を余儀なくされる。そうした中でチームが選んだのは、現実的な目標への切り替えだった。残されたメンバーで最終日の東京ステージまで走り切ることを優先する判断だった。

ホームで結果を求めるだけでなく、レースそのものを成立させる。その責任を背負いながら指揮を執る姿が、強く印象に残った。

レースを支える地元の行政、企業

小山町の込山正秀町長は、今年の開催について新たな試みの効果を実感している。学生の参加や子どもたちの応援が増え、現場の雰囲気に変化が生まれたと語る。

また、スルガ銀行代表取締役専務執行役員の戸谷友樹氏は、自転車を軸にした地域連携を長年続けてきた。ロードレースに限らず、“地域を楽しむライド”という視点で活動を広げている。

現在は富士山周辺を巡るロングライドやヒルクライム企画に加え、富士スピードウェイでのエンデューロイベントなども展開予定。競技と観光をつなぐ取り組みが、今回の舞台の土台を支えていた。

イベントの終わり、ゲストたちは共通した実感を言葉にしていた。

選手の走りを間近で見られたこと、そして観客自身がその場の一部として関わっていたこと。今中大介さん、杉浦佳子さん、佐野淳哉さんそれぞれが、立場を超えて同じ価値を感じていた。

来年もまたこの場所で、同じ時間を共有したい――。

そんな言葉が自然に交わされていた。レースは、走る者だけでは成立しない。支える者、そして観る者がいて、初めて完成する。

それは他のステージにも共通することかもしれない。しかし、この富士山ステージの一日が鮮やかに示していたのは、その構造そのものだった。

新ステージ登場のTOJ2026!全8ステージのコースプレビュー&デジタルガイドブックで観戦予習

新ステージ登場のTOJ2026!全8ステージのコースプレビュー&デジタルガイドブックで観戦予習

2026年05月14日

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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