
静岡を代表するあのお菓子のメーカーが街中に巨大なダイニングテーブルとチェアを築いた理由

タビノリSTAFF
- 2025年08月08日
きいスマートフォンの普及で誰もが感動的な景色や場面をその場で知らない誰かと共有できる時代、「絶景」とは風景に限らず様々なものを内包する言葉だ。人生で一度は見ておきたい価値ある現代の‟ネオ絶景”とその背景を紹介する連載企画、今回は静岡を代表するあの銘菓に関係する施設を紹介。
街中に突如あらわれるガリバー旅行記を思わせる巨大な家具群
東海道新幹線「浜松」駅を降り、「遠鉄バス」で約20分ほど、高層ビルが立ち並ぶ都心とは明らかに違う、地方都市ならではの空の広さが印象的な街の一角に、巨大なダイニングチェアやテーブルが鎮座する不思議な空間がある。
ぐるっとテーブルを囲むように配したチェアやスツール、テーブル下に配したスペースは、壁面全面がガラス張りで、周囲の景色を映しこむことで、巨大家具の存在感を一層際立たせている。地元、浜松市民はもちろん、週末にはこの景色を一目見ようと、県外からの観光客、とりわけ10~20代の若い世代も頻繁に訪れるという。いわゆる映えスポットだ。
まるで、巨人の国に迷い込んでしまったような、テーマパークを思わせるこちらの施設の名称は「SWEETSBANK(スイーツバンク)」、静岡を代表する菓子製造・販売メーカー「春華堂」が主として運営する施設だ。上の写真、右手にある手提げ袋の包装に見覚えがある方もおおいだろうが、春華堂は静岡が誇る銘菓「うなぎパイ」の製造メーカーであり、同社製品を扱う直営店舗と本社機能をこちらに構えている。
近年、ファンサービスの一環として、工場設備や生産工程の見学といった体験を通して、自社製品の認知度アップを図る取り組みは様々に行われている。実際、春華堂もうなぎパイの生産過程を見学できる工場を運営しているが、本社にまでこうした遊び心を盛り込む企業は稀だろう。なぜ、彼らはユニークな巨大建築物をこの地に建てる必要があったのだろう。春華堂広報室、髙橋睦美さんに話を聞いた。
「弊社では現在、うなぎパイなど自社製品の販売店の他、地域のつながりを意識した施設であり、本社も併設する『SWEETS BANK』、産業観光施設である『うなぎパイファクトリー』、食育・職育をテーマにした施設『nicoe』を運営しています。
SWEETS BANKは、お菓子屋である春華堂と、地元の金融機関である『浜松いわた信用金庫』との協業であることから、その名がつけられました。元々、この場所には弊社の本社施設があったのですが、銀行を利用されるお客様と春華堂を訪れたお客様が気軽に互いの店舗を行き来いただけるように、との思いも込められています」

なぜ、誰もが知る「うなぎパイ」の全面推しでなく、このようなコンセプトとなったのだろう。
「施設の立ち上げにあたっては、社内に弊社役員を交えたプロジェクトチームが立ち上げられ、繰り返し協議を重ねました。そこで『記録より記憶に残る施設』をという骨子が固まりました。うなぎパイは前面に出してはおりませんが、うなぎパイのキャッチコピーである『夜のお菓子』に込められた家族団らんの意味において、現代で家族団らんを象徴するダイニングテーブルと椅子をモチーフにして設計いたしました」
そう、うなぎパイといえば‟夜のお菓子”。一部ではうなぎの成分を絡めたオトナな意味も言われるが、元々のコピーに込められた意味は、夕食後などに、家族が食卓を囲む際にふるまわれるもの、という願いであり、同施設はそれを体現したものというわけである。
老舗メーカーでありながら、トレンドをつかむ柔軟な発想、彼らによい意味でのギャップを感じる方も少なくないだろう。前述の広報担当髙橋氏は続ける。
「うなぎパイは1961年の誕生当初から、うなぎパイ職人の手作りによる製法も味も変わっておりません。販売についても、うなぎパイは旅行のお土産菓子であることから実際にこの土地へ来ていただいて購入いただきたいという思い、そして職人の手作りのため割れやすい繊細なお菓子という特徴から、公式オンラインショップ含め、通信販売は一切行っておらず、販売場所は一部催事や百貨店での取り扱いを除き基本的に静岡県、愛知県を中心としています。そのため販売方法も昔から変わっておりません。
春華堂の経営理念として『温故創新』があります。古きを大切にし(守り)、新しいものを作り出していく。ここでいうと、うなぎパイは古くからある伝統を守っていくものであり、スイーツバンクは新しい挑戦、創造していくものであります。実は、他の春華堂商品に関しては、公式オンラインショップでも販売しております」
インバウンド需要を見込んで地方で人気のお土産用銘菓が様々な場所で買えるようになって久しい。それも顧客満足や販売戦略の一環であろうが、現地を訪れた際に、渡す相手を思って買う土産菓子には、贈り手も受け取る側も特別な感情が宿るものだ。次回の出張、浜松を訪れるなら、ぜひメーカーの心意気を感じる同地を訪れ、土産菓子を買ってはいかがだろう。
infromation
電話:053-441-3340
住所:静岡県浜松市中央区神田町553
営業:9時半~18時
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タビノリSTAFF
『タビノリ』は、旅の楽しさは、旅のはじまりである「移動」から、旅前の準備、ふとした寄り道、車窓から見つけるお気に入りの風景など、旅の余白に目を向け発信していくメディアです。また、旅をその周縁のものと組み合わせ、定番の旅先や新しい旅の提案などを仕掛けていきます。
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