
高台の絶景に日本家屋の情緒と正統派イタリアン、五感を刺激する「アロマフレスカ熱海林ガ丘」の特等席はハレの日に【熱海特集】

タビノリSTAFF
- 2025年07月08日
天下統一を成し遂げた徳川家康がこの地の温泉を気に入っていたこともあり、歴代将軍が江戸城まで温泉を運ばせた「御汲湯」の歴史が残る静岡県・熱海。東京からほど近く、海と山に囲まれた自然豊かな温泉地は、その後政財界人や文豪らに愛される日本有数の別荘地となったことはご承知の方も多いだろう。
JR東海道新幹線「ひかり」、「こだま」で「東京」駅から約40分で到着する「熱海」駅。駅前のロータリーでタクシーを拾い、5分ほど急な坂を登った先にある林ガ丘地区には、かつて太宰治が『人間失格』を執筆したとされる起雲閣別館(※1988年に取り壊し)があり、現在でも別荘や高級旅館、リゾートマンションなどが点在する、熱海随一の景勝を誇る瀟洒な別荘地だ。
そんな由緒あるエリアに、ここでしか体験することができない特別な時間が過ごせる隠れ家的イタリアンレストランがある。

熱海の高台に建つ旧き良き日本家屋でいただく旬の食材をいかした正統派イタリア料理
現地を訪れると、坂の途中の塀に掲げられた小さな看板が見にとまる。意識しなければ、ここにレストランがあるとは到底思わないだろう。裕福な知人の家にお呼ばれしたような背筋が伸びる感覚を覚えつつ、手入れの行き届いた階段を降りると、左手に温泉街越しの熱海湾と瓦屋根の凛とした日本家屋の玄関が見えてくる。
ほの暗い玄関の引き戸を開けると、「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」とシェフの黒木さんが、明るい笑顔で我々を迎えてくれた。ここは2019年にオープンした「アロマフレスカ熱海林ガ丘」、有名イタリアン「アロマフレスカグループ」の熱海店だ。
履物を脱ぎ、玄関を上がった先には旧い日本家屋ならではの、畳敷きの廊下が続く。記録によれば竣工は昭和元年、室内の随所に築100年超の歴史を感じ、まるでタイムスリップするかのよう。客室へ入り障子を開けると、熱海湾を見下ろす開口部から室内へ豊かな光が差し込んでくる。こちら、利用客は趣の異なる3つの個室から好きな部屋を予約する形式の個室でいただくレストランなのだ。伝統的な掛け軸と屏風といった和の設えと、モダンなグラスが空間に絶妙にマッチ、これから始まる非日常な体験への期待が高まる。




ゆっくりと食事を楽しんでほしい、そんな理由からランチ、ディナーともに最大3組までの予約制。人気の特別室は、なんと源泉かけ流しの本物の温泉まで付いている。到着後、まずは温泉に入ってから、縁側替わりのウッドデッキで涼み、その後に食事、帰る前にもう一度入浴など、個室付きのイタリアンレストランは数あれど、こんな楽しみ方ができるのはこの店だけだろう。

熱海湾からの風、季節ごとの自然の香りに、鳥のさえずり、料理を堪能する舞台装置として個室
料理は、アロマフレスカ熱海林ガ丘を堪能する旬の10皿「季節のアロマフレスカコース」(17,600円)を基本に、ランチでは皿数を抑えて少し軽くしてお得な「お昼の特別コース」(12,100円)のコースメニューのみ。いずれも、シェフが本場北イタリアでの修行時代に培った食材への強いリスペクトをベースに、旬の素材と地元静岡産食材を生かした本格イタリア料理だ。
取材時は5月。コースメニューは食材を生かすため月替わりなのだが、まずは6品の中で好みのものが選べる前菜からリコメンドしてもらった「ヤングコーンとルマーケのブルギニョン」。
「ルマーケとはフランスでいうところのエスカルゴ。私も修行したイタリア北部にあるピエモンテ州でよく冬に煮込む料理などで食べられているものです。日本の梅雨といえばかたつむり、と言ったらアレですが、ルマーケとヤングコーンはともにバターと相性の良い食材どうし。2つを合わせて、タイムで香りづけしています。上に添えのせているのはヤングコーンのおヒゲ、実は一番甘くて美味しい部分なんです。ワインは、世界3大スパークリングワインである、イタリアのヴェネト州産のスパークリングワイン、プロセッコ。中でも最高格付けDOCGのプロセッコをオリジナルラベルで特注し、3ヵ月ごとに現地から作りたてを空輸しているアロマフレスカのシグネチャーワイン。ぜひ、そのフレッシュさと香りと合わせてお楽しみください」と、やさしい語り口でよどみなく語る黒木シェフ。
普段、取材などで求めらない限り、料理に対してあまり詳細は語らないということだが、聞けばとめどなく言葉が湧き上がってくる。そのもてなしは什器にまで及び、前菜はあえてお箸と和の器で提供することで、日本家屋であるこの空間の雰囲気にメニューを馴染ませ、徐々に洋食器へと替えるなどそのこだわりぶりは徹底している。実はこの店の空間や設えは、単なる雰囲気づくりのためではなく、シェフの作り出す料理のための舞台装置でもあるのだ。
店名の「アロマフレスカ」とは、イタリア語でフレッシュな香りという意味。香りを重要視し、旬の食材と伝統的な調理技法を用いながら、香りと盛り付け、味わいの三位一体を追求するという創業以来の哲学。黒木シェフもまた、そんな意思を受け継ぎ、料理において香りを重視している。全室個室の閉ざされた空間であるアロマフレスカ熱海林ガ丘は、そうした同店のこだわりである香りを最大限にいかせる装置でもあるわけだ。
パスタは「由比桜えびのティアラ フレッシュトマトのタリオリーニ」。静岡が誇る食材である駿河湾産、ぷりぷりのさくら海老をかき揚げにして、文字通り王冠のようにパスタの上に乗せたこの時期定番の一品。テーブルに供された瞬間、えびの香ばしさがガツンとくる一方、ハーブのマジョラムを加えることで、清涼感のあるフレッシュな香りが良いアクセントに。
「パスタでかき揚げというのもいいのかなぁ、と思いまして(笑)。こんなロケーションなので和の部分を生かすことは意識しています。和食ってやはり素晴らしくて、桜エビの料理ならやっぱりかき揚げが一番美味しいのです。ただ、このパスタと一緒に運んだ時に、加熱されたエビの香りだけだと味が重たい印象がして。パスタとかき揚げの間にマジョラムの香りを加えることで、エビの甘さやパスタのトマトの甘さが、爽やかになるのです」
メインのお肉は「伊豆牛と下田の花クレソン初夏の伊豆の一皿」をチョイス。さっぱりしながらコクのある、交配種の県内産和牛・伊豆牛のランプ肉に、清流で知られワサビなどでも有名な伊豆・下田産のクレソンを添える。「春のイメージがあるクレソンですが、5月になると花が咲きます。実はその頃が香りがあって一番美味しい時期なのです。同じ伊豆の素材どうしをではありますが、香りを感じていただくだめにお肉の部位はさっぱりした赤身のランプを選んでいます。クレソンは花の部分はフレッシュさを、茎から下の部分はソテーすることで、空心菜のように仕立て、風味の違いを感じていただけます」
素材を追求し、香りを生かす、アロマフレスカのDNA
料理の専門学校を卒業直後に働いたイタリア料理店の先輩シェフに感銘を受け、本場イタリアで料理を武者修行。帰国後、勉強のためにイタリアンのパンやデザートの店に勤めるなど、幅広い知識と本場の調理技術を習得してきた黒木シェフ、そんな知見をいかした料理と、香りを生かすアロマフレスカのDNAが、アロマフレスカ熱海林ガ丘の魅力の根源となっている。
「基本的に、できるだけ静岡や地元の食材を使うようにしています。本当に美味しいものって、やはりその土地にあるものだと思うのです。ただ、今度、三島のマンゴーをメニューにいかそうと考えているのですが、6月は沖縄のパイナップルも美味しい時期です。地元の食材は大切にしますが、その時期、本当に美味しいものは、地元以外の別の場所にも絶対にある。考えに縛られすぎず、その時旬な素材を使うようにしています」
四季折々の旬な食材を選ぶシェフの目利きと、香りを生かした確かな調理技術、風の音や虫の声まで感じ取れる静かな個室での提供、この店での食事は、ぜひ五感をフルに活用して味わっていただきたい。
Information
アロマフレスカ熱海林ガ丘
住所:静岡県熱海市林が丘4ー8
電話:0557-81-6666
営業:(Lunch)11時半~15時半(L.O.14時)、(Dinner)17時半~22時(L.O.20時) 不定休
https://hayashigaoka.aromafresca.com/
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タビノリSTAFF
『タビノリ』は、旅の楽しさは、旅のはじまりである「移動」から、旅前の準備、ふとした寄り道、車窓から見つけるお気に入りの風景など、旅の余白に目を向け発信していくメディアです。また、旅をその周縁のものと組み合わせ、定番の旅先や新しい旅の提案などを仕掛けていきます。
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