全長45kmを完全踏破!! 灼熱の「ダイヤモンドトレール」【前編】|PEAKS 2026年9月号
PEAKS 編集部
- 2026年08月07日





その後、まだまだ遠い目的地をめざして、どんどん先へと進んでいく。気温は上がりつつあり、もはや高温というよりも灼熱という言葉が合っていたが、錦明水で飲み水を確保したときまでは順調だった。ところが、その先で僕は道を間違えてしまった。
ダイトレには行き先を示す道標や石柱が至るところにある。だが、新旧の道標が同じ場所に3つくらい並んでいたりする一方で、どういうわけか間違えやすい場所にひとつもなかったりするのだ。そんな道標不在ポイントで僕はダイトレから外れてしまい、別のトレイルを下ってしまった。なにかおかしいと思ってGPSで確認すると、標高にしてすでに100m以上もダイトレ本線よりも下にいることが判明した。
そこから登り返す道の虚しさよ。できるだけ短い距離でダイトレに復帰しようと選んだ道はけっこうな悪路で、僕はどっと疲れてしまった。しかも気温は上がり続け、日向に出るとそれだけで汗が噴き出してくる。天気予報では街中の気温は40℃に近く、そこから判断すると山中でも30℃を軽く超えていそうだ。
紀見峠、杉尾峠、谷尻峠、千早峠、久留野峠。ダイトレを歩いていると、いくつもの峠を通過する。山頂も通らないわけではないのだが、樹林帯の山は山頂からの視界がきかず、印象が薄い。それに比べると各地の峠は休憩の適地でもあり、山頂よりも記憶に残る。日本でも有数の古い歴史をもつ地域だけに、峠は昔からの交通の要所として、古びた神社や史跡のようなものが現在でも数多く残っているのも、峠のイメージを強めている一因かもしれない。
トレイルの両サイドには針葉樹の人工林が目立つ。林道が発達した低山だからか手入れが行き届いた樹木が多く、気持ちよく歩いていける。ただ、気持ちはいいが、風景はあまり変わりばえせず、僕のような気の短い男はちょっと飽きてくることも否めない。


だが、背の高い針葉樹に広葉樹や低木が混ざり始め、そこにどことなく庭園っぽい雰囲気まで加わってくると、とうとう金剛山の一角、ちはや園地のキャンプ場だ。ここまでの灼熱で飲み水は切れかけていたが、これで安心である。時間は15時すぎで、金剛山キャンプ場の受付時間にも十分に間に合った。




金剛山はダイヤモンドトレールの中心部だ。ダイヤモンドは日本語で「金剛石」。じつはダイトレはそこから命名されているが、それだけではなく、この付近には見どころが多い。歴史ある葛木神社、大阪府の最高地点、そして金剛山は日本二百名山。以前、僕が初めて金剛山を訪れたときは日曜日ということもあり、あまりの混雑ぶりにびっくりした。ある意味、僕が暮らす東日本の代表が高尾山だとすれば、西の代表は金剛山。山頂は葛木神社の神域で立ち入り禁止だが、そういうことも含めて関西の歴史を感じられるのが、ダイトレの魅力といえそうだ。
僕は夕食前にそれらの名所を歩き回った。おもしろいのは、修行や祈願、健康維持などを目的として「千日登山」を行なっている人の存在だ。葛木神社には名前とともに参拝した回数が掲示されており、多い人ではなんと万5000回以上!毎日登っても40年以上かかる計算だ。速い人でも最寄りの登山口から往復3時間ほどかかるらしく、とても現実とは思われない回数だが、これは公式に記録されている事実だ。トレイル歩きを楽しんでいる人とはまったく別方向からの金剛山との付き合い方なのである。




この日の晩の気温は高かった。間違いなく熱帯夜だろう。しかし、僕がテントを張った場所は下界から強い風が吹き上げる通り道になっており、体感温度をぐっと下げてくれた。それでもときどき風が止まってしまうと暑苦しくなるが、長距離を歩いて疲れているからか、しっかりと眠ることができた。


HEAT PROTECTION 最高気温35℃以上!今回の暑さ対策はコレ!
計画の時点から灼熱に耐えなければならない2泊3日が容易に想像できたため、可能な限りの暑さ対策を行なった。左の4つは僕の主要なグッズ的な対応で、実際にかなり有効だった。粉末ドリンクもそのひとつといえる。

中綿入りのスリーピングバッグは持たず、シーツのみ。これで十分どころかなくてもよいくらいだったが、汗を吸収できる素材で身をくるんでいると、やはり快適だ。

テントのインナーはフルメッシュ。フライが結露で濡れると水移りはするが、通気性のよさというメリットを重視した。晴れていればフライシートは使わなくてもいい。

塩分を補給する行動食として梅干しを導入。小型ボトルへ大量に収めて、休憩ごとに口にした。少々重くても、あらかじめ水分を多く含んでいる食品のほうが圧倒的にうまい。

防水性メンブレンを使ったシューズは必要ない!選んだのはローカットで、アッパーが非防水性のメッシュタイプ。通気性がすばらしく、履き口からも空気が流れ込む。
※この記事はPEAKS[2026年9月号 No.180]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
※最新の情報を直接ご確認の上ご計画ください。
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編集◉PEAKS編集部
文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉後藤武久 Photo by Takehisa Goto
取材期間:2025年8月25日~27日
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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