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【創刊の辞】日常とフィールドの境界をなくすアウトドアライフスタイルメディア『VINAVIS』出航によせて

コロナ禍で熱病のように広がったキャンプブームは、ひとつの文化として定着しきる前に、一過性の流行としてすぎ去ろうとしています。せっかく自然に親しむ扉を開いた人々が、アウトドアを単なるブームとして消費してしまうのは、長年この世界に携わってきた者としてあまりにも寂しいことです。

オートキャンプは本来、すばらしい世界への「入り口」です。野営の楽しみを知ったなら、次はキャンプそのものを「目的」ではなく、より深い自然を楽しむための「手段」として捉えてほしい。登山、シーカヤック、リバーツーリング、あるいは古道などでのロングディスタンスハイキング。そうしたアクティビティを楽しむための「宿泊手段」として野営があることに気づけば、世界はもっと自由に広がっていくはずです。

山岳雑誌『PEAKS』は17年、フリーマガジン『Field Life』は20年以上、雑誌やイベントなどのコンテンツを通じて、自然に親しむ喜びを伝えてきました。しかしそのなかでつねに感じていたのは、「本格的なアウトドア」と、街中の観光で楽しむ「日常のレジャー」のあいだには、目に見えない分厚い壁がそびえているということ。あるいは、専門媒体に携わるがゆえに、意図せず壁を作っていた側だったのかもしれません。その分断された2つの世界を、いま、ゆるやかにつなぎ直したい。それが、この『VINAVIS』という新しいメディアを立ち上げる原動力です。

私自身、最初から本格的に山に向かう人間だったわけではありません。はじまりは「アウトドアウエアの古着が好きで集めていた」という、ファッションからのごくありふれた好奇心でした。街でまとっていたお気に入りの一着を、本来のフィールドで着てみたい。そんな小さな衝動が、私を深い森へ、高い山へと導いてくれたのです。

私たちのルーツをたどると、舟を漕ぐための道具である「櫂(かい)」の字を社名に冠した出版社に行き着きます。そしてそこから産声を上げた『Field Life』。当時の制作陣が愛してやまなかったシーカヤックの宿泊旅において、水辺の野営で重宝されていたのが、軽くコンパクトな「登山用品」でした。そこから“アウトドアをより楽しむためには、登山の知識・技術が下地として最適だ”という確信が生まれ、山岳メディア『PEAKS』へとバトンが繋がれたのです。

かつての社名が「新たな世界へ漕ぎ出すこと」を意図して名付けられたものかは、いまとなってはわかりません。しかし私たちはいま、その原点である「櫂」を力強く握り直し、志も新たに自分たちの舟を漕ぎ出そうとしています。

より多くの人をまだ見ぬ景色へ誘うため、みんなを乗せて進む「舟(NAVIS)」と、私たちが歩む果てしない人生や日常という広義の「道(VIA)」。この2つを掛け合わせ、『VINAVIS(ヴィナヴィス)』と名付けました。一本の櫂から始まった私たちの物語は、いま、ひとつの舟となって新しい道を進み始めます。

遠く見上げる山脈を目指さなくても、冒険は日常のすぐそばに潜んでいます。いつもの帰り道、少しだけ遠回りをして新しい路地の風を感じること。雨降る朝、頼もしい機能をもったお気に入りのシェルジャケットに袖をとおし、街へ踏み出すこと。小さなきっかけひとつで、日常は鮮やかに景色を変えます。

足元のコンクリートも、未だ見ぬ山の稜線も、すべてはひと続きの道の上にあります。 あなたが歩む日常という名の旅路が、より味わい深く、心躍るものになるように。『VINAVIS』が、そのささやかな道標となれれば幸いです。

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PROFILE

宮上 晃一

PEAKS, VINAVIS / 編集長

宮上 晃一

山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。

宮上 晃一の記事一覧

山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。

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