
銀座で、ひとつになる。「GINZA MILE」への道。
CHIE
- 2026年06月30日
去る、6月20日。ナイキがプロデュースする1マイルレース「GINZA MILE」が、銀座の「旧東京高速道路(KK線)」(廃線跡)で開催された。
男子の1マイルレースの部では日本新記録が更新され、日本を代表する田中希実(女子1マイルレース優勝者)や矢田みくになどをはじめとするトップアスリートも参戦。大いに盛り上がりを見せたこのレースに、スポットライトを浴びることなく、取り立てて結果も出せなかったチームの弱虫ペダル序章のドラマがあった。「GINZA MILE」を機に結成した我々は、一丸となりリレー初戦に挑む。走る楽しみは結果だけではなく、そのプロセスにある。その醍醐味をお届けする。
予選突破の目標を掲げ走り出した私たち。

本番2週間前の月曜、初回の練習会を行った。
メンバーはレース経験数のほぼないファンランナーが多く、ぬるいツラしてやってきた。私はここに喝を入れることを決めた。

予選は6人で全長6.4kmの距離の襷をつなぐので、各自、長くても1.2km、短ければ800m走り切ればいい。完走できないはずのないその距離、ゆえの、ゆるいツラ構えだった。しかし、私は知っていた。このレースが過酷なことを。
このレースは10年以上前に今回と同じくナイキが主催したキャンペーンと同じ類のものであり、これは確実に高速レースの戦いとなり、どうせ我々のような素人では刃が立たないことを思い出していた。それでもレースというのは、全力を出し、頑張ること自体が大切なのである。記録だけではなく、記憶も刻んでほしい。そんな思いから、今日、この場所で、メンバーに血反吐吐かせて追い込まねばならないという使命感を持った。

私がこれまで培ってきたトレーニングの中で、最もスピードアップの底上げ効果を発揮してくれたのはファルトレクトレーニングだった。長距離を走り込むわけではないので、時間もかからず、手軽に励める。ただ、追い込み方次第ではかなりしんどい。案の定、3走目くらいから、メンバーたちの悲鳴が上がりだした。
心肺機能に鞭を打つこのトレーニングに、フットサルを趣味にした痩せ型メンバーその1(takuro)は途端に体力を奪われ、高校時代に、中長距離の選手だったメンバー2(hisaya)は、最後のダッシュで左足に異変を起こしてしまった。まずい、こやつら、力加減がわかっていない。
苦しさを分かち合うと、仲間の距離はとたんに縮まる。
これは、仕事でも、恋人同士でも、家族でも良くあること。せっかく集まったのだからと、練習後、片足を引きずる仲間と共に、迷わず宴へと向かった。翌週に設定していた練習会までに各々で最低1回はこのトレーニングを今一度やることを約束し、この日は夜中まで酒に溺れた。我々は走るだけでなく、酒量のペースも飛ばしすぎていた。
翌日、メンバー2(Hisaya)から左ふくらはぎが、肉離れの可能性あり、との報告を受ける。非常にまずい! なぜならこのレース、すでに登録したメンバーの差し替えは禁止。一人走れなくなれば、その分残ったメンバーで埋めなければならない。積極的休養を余儀なくされた仲間に一刻も早い復活を皆が願った。
2回目の練習会は、無理のないように走ることを全員が肝に銘じた。“今日はぁ、流す程度でぇ、出走順通りにぃ走ってみてぇ、本番テンパらないための一日にしようね〜♡”と、声を掛け合い、前回とは打って変わってゆるいメニューに変更する。にもかかわらず、第四走者として走り出した左足肉離れ気味のメンバー2(Hisaya)は、開始10歩で右足ふくらはぎを引きずって折り返してくる。

デジャブではなかった。反対側も肉離れになってしまった。Hisayaはチームの最年長。中年の維持をみせるのは”今じゃないw”という本音は胸にしまい、Hisayaに心配の声を掛ける。この時点で、5人で戦うことが決まった。暗いムードの中、この日は皆まっすぐ家に帰っていった。
雨にも、マケナイ! プレッシャーにもマケナイ?

本番当日。あいにくの雨。
そして、メンバーのウェアは一様に地味である。これを見て、“このタコ野郎!!”と私は思った。
クロは目立たないのに、さらに雨だったら余計、襷渡しの際に、わかりづらくなる。“混戦した中、襷渡しで次走者を見失うでしょうがああ!!”と、一丁前にチームに苦言する。しかし、この心配は、取り越し苦労となる。我々は第二組だったので、第一組のレース状況を確認しに観覧席にいた。
練習中、“大体400mを90秒くらいで走れたらいいね!”“でもアドレナリンが湧いて80秒くらいになっちゃうかもよ♡”だなんて、呑気に語り合っていたのだけど。

第一組、第一走者の400mのトップは、1分を切っていた。というか、そのゾーンがこの組のピークとなり、1分10秒を超えてくるとまばらになっていっていた。一走者は足の速いランナーをつけがちだけど、あまりにも、皆、速すぎるのである。

横で一緒に見ていたメンバー3(Taiki)の顔が凍てつく。
それはそう。我々は、我々が思っていたよりノロかった。でも、全力を尽くすことに意味がある。

喉が焼けるようなアツさを感じるほどに、みんな一生懸命走った。





襷をつなぎ、400mずつをそれぞれが周回する。その都度、戻ってきたメンバーに、別のメンバーが抱擁して労いの言葉をかける。

体力不足のメンバー1(Takuro)はコーンの横で落ち葉のようになっていた。

水泳選手だったメンバー4(Takuma)でさえこのタフなレースに疲労を隠せずにいた。

最後の周回、アンカーはメンバー5(Riki)。4周目の400m、(結論、体力に自信がある、3人にHisayaの分を分配した)である。ラストスパートを応援する我々。ゴールしてきたRikiを労い、抱擁し、チームは一つになった。そして、肩を組んで歌舞伎町「テルマー湯」へと向かったのである。

予選突破は夢のまた夢だったけれど、私たちは清々しい気持ちでいた。次のレースへの意欲も高く、今度はトレランしたいね! だなんて盛り上がった。私は、観客の歓声や、チームとの声の掛け合いに絆のようなものを感じ、たった800mしか走らなかったのにも関わらず、その一体感に包まれ、達成感のようなものが込み上げていた。タイムじゃない、走る長さでもない、レースそのものの面白さを教えてくれた「GINZA MILE」に感謝する。
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