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国際山岳ガイド・天野和明さん「 憧れの頂きに立ちたいという思いはおなじ、しっかり支えたい」|山のガイド名鑑 File.9

ガイドの世界で活躍する人々にフォーカスする連載。第9回は国際山岳ガイドの天野和明さんをインタビュー。

初級向けガイド、技術講習、国内外のアルパインルートへの誘い。天野和明さんのガイドは幅広い。それは、彼がだれとでも分け隔てなく接する姿勢をもっているから。分厚い経験を礎に、人を頂きに導く。

分厚い経験を礎に、人を憧れの頂きへと導く

ーーガイドを志したのは?

天野さん:大学卒業後はヒマラヤ通いが続き、8,000m峰6座(うち5座は酸素ボンベ不使用)に登頂する機会にも恵まれました。けれどその後、アルプスを登らずヒマラヤへ行ったことに、段飛ばしをした気持ちがあり、シャモニーへ向かいます。スケールに圧倒されました。もっと登りたいと思いました。

そのとき、山岳ガイドの姿を目の当たりにして。とてもカッコよかった。ロープさばきなど立ち居振る舞いや、氷河の上に立つ姿に見惚れました。また、周囲が山岳ガイドに敬意をはらい、社会は冒険すること、自然のなかでトライする精神を尊重していて。すばらしいと思いましたね。

▲石井スポーツ登山学校校長を務めて約10年。厳しさもありながらていねいな指導。冬の硫黄岳山頂にて

ーーガイドの仕事で大切にしていることは?

天野さん:20代のころに富士山ガイドをしていました。大勢のツアー客を、毎日毎日山頂まで導く、そのくり返しです。「一生に一度は富士山」という思いでやってくる人が多く、遠方に住んでいて、富士山を初めてみたという人も。富士山は特別な山だと感じ、彼らの熱い思いに触れる日々でした。これが僕のガイドの原点です。山に登って感動する、努力を重ねて目標の頂きに立つ。そういった場面に立ち会えるのはガイドとして幸せなことです。そのためか、僕はお客さまに、登山を始めた理由やその山を目指した経緯などを聞きたいと思い、たくさん話しかけます。人のそういう思いに触れることに喜びを感じるし、それぞれの思いを大切にしたいと思っています。もちろん、ガイドの役割として安全を確保したうえでのことですが。

▲20代のころの富士山ガイドはガイドの原点

ーー8,000m峰無酸素登頂、ピオレドール受賞、国際山岳ガイドの3つをもつ人はほかにいません。

天野さん:自分では気づきませんでしたが、お客さまに「売りにしたら」と言われました(笑)。長年山を登り続けたなかで、何度も困難な局面に遭いました。荒天で山や壁の中に閉じ込められたり、お座りビバークが続いたり、進退窮まったり。これらを乗り越えてきたのは、僕の血肉となり、少々のことではへこたれない自負もあります。さらにさかのぼれば、明治大学山岳部で徹底的に仕込まれ、山に登る力のゆるぎない土台を作ってもらったことが、僕の登山とガイディングを支えています。

いっぽうで50歳を目前にし、残された時間がそう長くないことも実感しています。登りたいリストはたくさんありますが、優先順位をつけ、時間を作らなければ全部は登れない。この春は、山仲間たちがアイガー北壁に行くというので、「いっしょに登りたい」と申し出ました。よい時間でした。

▲今年4月ガイド仲間と念願のアイガー北壁へ。想像よりも手ごわかったけれど思いっきり楽しめた

ーーガイド社会を牽引していく立場になったいま、考えることは?

天野さん:山岳ガイドと国際山岳ガイドの検定員をやっています。登山ガイドの層は充実しつつありますが、山岳ガイド、国際山岳ガイドの人数、志願者数は激減しています。現役の日本人国際山岳ガイドは15人程度ですが、ネパールは70人を超え、この先中国も参入してきます。日本は後進です。時間とお金をかけ、難しい試験を受けて、リスクを引き受けてまでなりたい人は少ないかもしれません。けれど、すばらしい仕事です。僕たちがもっとカッコよくなり、社会からも認められれば、志願者も増えるのでしょうか。志のある人たちには、僕ができることを惜しみなく伝え、力になりたいと思っています。

天野和明さん

1977年生まれ。故郷山梨で妻、息子、犬と暮らす。植村直己に憧れ明治大学山岳部へ。ガッシャブルムⅡ、Ⅰ峰、ローツェ、アンナプルナ、チョ・オユー、シシャパンマの8,000m峰登頂。2008年のカランカ北壁初登攀でピオレドール受賞。09年にスパンティーク北西壁ほかアラスカ、カナダ、アルプスの登山歴多数。
Instagram:@amano.kazu

  • 資格:国際山岳ガイド連盟認定国際山岳ガイド
  • 得意分野:初級からアルパインルート、海外までオールラウンド
  • 好きな山域:穂高連峰、富士山、山梨県の山々
  • 好きなアクティビティ:アルパインクライミング
  • アウトドア以外の趣味:ボーダーコリーをなでること

 

 

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