
パグ銀河から来た降下部隊「クマガイソウ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #55
成清 陽
- 2026年04月02日
INDEX
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
虫たちも動き出す3月、体は緩んでついウトウト。「春眠、暁を覚えず」。このことわざには、何度納得したかわかりません。さあ、そんな春は、そろそろ山シーズン。まだまだエンジンがかからぬ今日このごろですが、そろそろ山行計画を立てなくては。と、そんなときに思い出すのが、この異色のお花。ホントに花なのコレ?というお姿を見るため、さあ山に出かけましょう!!
や、山の中にパグの群れがぁ!!
陽光が心地良い森のなかを歩き、ある植物の群生地へ。いやあ、気持ち良くて、つい眠くなっちゃうなあ…なんて思いつつ歩を進めると、なんじゃこりゃ。穏やかな山行は、見事ぶっとばされます。この花こそ全国的に珍しく、また絶滅危惧種の筆頭候補、クマガイソウ。クマ? いや、どー見ても耳垂れたパグじゃないの? あまりのインパクトに、初見であればだいたいの方が「はぁ?」って一瞬絶句しちゃいます。

Data
- クマガイソウ(ラン科)
- 一般的な花期:5月~6月
- 主な生育場所:亜高山/高山帯の樹林帯
命名ストーリーがヒストリー
さて、外見こそパグパグしている彼らですが、じつはその御名、クマではなくちょっと高尚な由来があるようで…。この花の袋状に膨らんだ部分・唇弁(しんべん)を、源平合戦に登場する武将、熊谷直実が着用していた「母衣」(ほろ)にたとえて、クマガイソウとなったそうです。源義経に次ぐ悲劇のヒーロー、平敦盛公とのやりとりがあった武将でもあるため、同じラン科の「アツモリソウ」と対比したんでは、とうなずきかけますが…なぜ歴史。そして、なぜあまり知られていない武将にしたんだっ?

またも異星人襲来説?
ネーミングはもちろん、外見だけでもツッコミどころ満載のクマガイソウ。ランの仲間ってだいたいが細長くて、ちょっとヨレヨレした葉なんですが…。クマガイソウの葉っぱは、カプセルがふたつくっついたというか、無限マーク「∞」というか。ヘンテコ過ぎて虫も食わないからか、非常にキレイなのも理解しがたいポイントです。これ、前回に次いで、なんだか宇宙的なニオイがしませんか?? ホラ、異星人が降り立ったから各地に群落がある、とかさ~。さあさあ、本連載お得意の脱線劇場、始まりましたよ(笑)!

本当にインパクトがあるのは「散り際」
そしてそして、枯れかけの花って一般的に絵にならないのですが、クマガイソウはある意味これが最高潮。名付けて「ずぶ濡れパグ」。犬から離れたいなら、「貞子」かな。野菜に例えるなら、「肥料不足のなすび」とか? 宇宙を感じたいなら、「墜落パラシュート」…。いずれにしてもシワシワになった母衣と、だらんと下がったガク(だよね?)のイメージが、もうジワッジワ。こちらの悪ふざけも、ピークです!!

他言無用にてオネガイシマス
鮮烈な見た目が脱線を生み、そして春眠から覚醒する良いきっかけになりました(笑)。で、クマガイソウがどの山に咲いているかといいますと…オフレコなんだこれが。いや、各地に群生地として公開されているところはありますが、手つかずのところでは乱獲が心配されているのだそうです。「きっとオカネになるからだろうな」…とだいぶヨダレが垂れ、筆者の目がドルマークになってきてしまった…ではでは、今回はオサラバします~!!

さてさて、今回ご紹介してきた、クマガイソウ。いかがでしたでしょうか?生息地を明かせない心苦しさはありますが、きっとSNSなどで丹念に探せば、必ず見られるはず。そのヘンテコぶりには、一度は触れてみてほしいと思います。そして、「とっていいのは写真だけ」。これを徹底していただけば、いつか必ず生息地は公開されていくのではと…。植物マニアだけが見られる花にならぬように、皆さんご協力くださいね!!
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
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