
ワレ、浦島太郎の親類にあらず!!「ウラシマツツジ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #51
成清 陽
- 2025年12月13日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
全国的に冷え込みが強まる昨今…そして昨晩、ついに岐阜県山間部は初雪がちらつきました。いやー、これからやってくるのは、路面&水道管凍結。あまりのひえっひえぶりには、笑うしかありませぬ。さて、そんな今回のテーマは、爽やかな夏のカット&華やかな草もみじで思い起こしたい、あのお花。なかなか目に止まることのない御方に、スポットライトを当てちゃいます!
華々しさとは…無縁?
初夏の八ヶ岳を訪れると、やがて背の高い木々がなくなり、あたりは岩峰が彩る稜線に。そして、下界とは違う爽やかな空気に思わず、のび~っ!そんなとき、足元から響いてくる声、聞こえてます?「おいおい、オレ見てオレ~!!」「こっちこっち~一生懸命咲いてるっつの~!」「あら、アタシが先に見つけてもらうんだから!」。⋯ってまあ妄想甚だしいですが、6月の八ヶ岳といえば、イワヒゲやイワウメ、さらにオヤマノエンドウなどが全盛期。そんななかにあるクリーム色のお花が叫んでます。「スルーしないでぇ~!!」。
Data
ウラシマツツジ(ツツジ科)
一般的な花期:6月~7月
主な生育場所:高山帯の岩場
大人気フルーツのそっくりさん
涙ぐましい声に振り返れば、「なんだか見たことがあるような…、ないような」。いやいや、絶対みんな見たことがある系のお花です。というのも彼らは、大人も子どもも夢中になる、ブルーベリーのご親戚。「えっ、ツツジってみんなブルーベリーの仲間でしょ?」と思ったアナタは、詳しくてスゴイ、そしてさすが!!でも、そこは素直にウラシマツツジを見てあげよう。そして、写真の一枚でも撮ってあげよう(笑)。

じつは「限定品」です
コケモモやコメバツツジといった一族とは、写真のようになわばり争いを展開することもある、このウラシマツツジさん。そんな彼を推す理由は、超シンプル。じつは彼ら、高山限定なんですわ。本連載では、「生息地:●●など」と良く書くんですが、彼らの住み処はゼッタイに「高山帯の岩場」なんですね。例えるなら彼らは、山小屋で売っている“限定”手ぬぐいであり、“限定”チュロスみたいなもの。ほれほれ、限定品に弱い方、ちょっと興味湧いてきたでしょう~!?

ワレが主役の季節、キタキタキタ~!
さぁさ、皆さんの関心を惹きつけたところで、ぜひ見てほしいこの光景。秋のアルプスを彩る真っ赤な小さい葉っぱは…ウラシマツツジです!!「あ、思い出した!」というアナタはホントに偉い。そう、高山の青空とコントラストを成すのは、こちらとチングルマくらいですからね。彼らにしてみれば、やっと訪れた主演のチャンス。記者会見ばりにシャッターを浴びて、快感を味わうのだそうです(※主観です)。

「氏とはなんの関係もございません」
ところで、ウラシマツツジという名前は誰が聞いても、「浦島太郎さんとのご関係は!?」って思うじゃないですか。残念ですがコレ、事実無根でして…。名前のウラシマ=裏縞、つまり葉っぱの裏にある葉脈が「縞々」に見えるからとのこと。「アミアミの間違いでは…」と、ツッコミたい気持ちで、噴火寸前です。毎回のように疑われているウラシマツツジさんも、「ワタクシ、何の関係もございませんのでっ!」とパパラッチから逃れているのだそう(※主観です)。世間様の誤解にめげずに花を咲かせる彼ら、ぜひ来年は見つけてあげて。そして間違っても、「浦島太郎さんとのご関係は!?」って聞いちゃダメですよ!!

さてさて、今回ご紹介してきた、ウラシマツツジ。いかがでしたでしょうか?初夏の高山帯(中部以北)であれば、彼らの姿はだいたい見かけるはず。分布範囲が広いので、見つけやすいというのも、彼らの特色といえそうです。すでに草もみじは知られているはずですから、個人的にオススメしたいのは、やっぱり花。ブルーベリー一族としてはレアな花色を、ぜひ見つけてみてください!
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
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