
【100楽山/霧訪山】静けさのなかに暮らしが息づく。私の好きな冬の低山歩き
ランドネ 編集部
- 2025年11月13日
標高の高い山で雪が降り始めると、冬の低山歩きシーズンが到来します。ここでは、冬でも雪が積もりにくく、気軽に日帰りハイクが楽しめる山を紹介。今回は長野県に移住し、普段から山歩きを楽しんでいる岡部りえさんに教えていただきました!
山へと続く道は暮らしのとなりから

霧が訪れる山と書いて霧訪山(きりとうやま)、なんとも美しい名前の山です。標高1,305mのこの山は長野県塩尻市と辰野町の境に位置し、天気が良いと八ヶ岳から南北アルプスまでぐるっと見渡せます。
高くそびえるアルプスが非日常だとするなら、里山は私たちの日常にそっと寄り添う山ではないでしょうか。霧訪山には3つのルートがあり、今回は小野駅から歩く小野コース(通称かっとりコース)をご案内します。

すぐそこに冬の気配を感じるこの日の早朝気温は3度。ひんやりとした空気の中、あたりは霧に包まれていて「まさに霧訪山〜!」とひとりテンションが上がります。
小野駅から登山口までは民家の合間を縫うように細道が続いていて、鼻腔をくすぐる朝ごはんのいい香りに思わず足を止めました。匂いから推測するに、焼魚とお味噌汁に違いない!パンを流し込んだだけのお腹がクゥ〜と悲しげに鳴きます。

尾根をゆく小野コースは登山口から片道1時間と一番短いルートながらも、勾配がありなかなかの登りごたえ。



パリッと冷えた色とりどりの葉っぱを踏みつつ、落ちていた松ぼっくりをそっと手に取ってみると季節の移ろいを感

急登にほんのり汗ばみつつ少し立ち止まって深呼吸。キンキンに冷えた酸素が肺に入り込んできて、学生時代にひいひい走った冬のマラソンが思い出されました。



長野の名峰をぐるり独り占め

山頂に着くと遠くの霧が徐々に晴れてきて、穂高連峰に槍、遠くには白馬の山々が見えます。雲海の広がる南東方面には八ヶ岳や南アルプスと、塩尻盆地に位置するからこそのぜいたくパノラマ。

景色を堪能していると、あとから登ってきた長靴姿のお爺さんが山頂の鐘をゴォ〜ンとひと突き。山々を一瞥すると颯爽と降りていきました。う〜ん、スマート!今度マネしよう。


ゆっくり下山していると、遠くで聞こえる汽笛の音。時折チェーンソーの音がしたと思ったら、今度はふもとにある中学校のチャイムが鳴り響きます。冬の静けさのなかに垣間見える生活の温度が心地よい。
あっという間に登山口に着くと、朝は気づかなかったポストがありました。登山届かと思いきや「登山ノート」と書いてあるではありませんか。ページをめくるとたくさんの人が霧訪山の思い出を書き綴っていて、この山がいかに愛されているか分かります。残り少ないページの端に私もこっそり書き残しておくことにしました。

よく登りにくるという地元男性に話を聞くと「なかには毎日登っている方もいますよ、長靴を履いたお爺さんなんですが」とのこと。なんと、山頂で出会ったスマートなお方ではないですか!毎日登っているからこその手慣れた鐘つきだったのですね。
冬の心あたたかな山歩き

奥深く自然あふれるアルプスも好きですが、日常のすぐとなりにある里山もとてもよいものです。
足元の小さな自然に立ち止まっては幹の手触りを確認し、麓に流れる生活の音色に耳を傾ける。たとえ大きな感動はなかったとしても、ぬくもりを感じる穏やかな時間がそこにはあります。
おすすめのルート
小野駅~霧訪山登山口~霧訪山山頂~小野駅(歩行時間:3時間)
紹介してくれたのは

ライター/岡部 りえ
餃子の都、宇都宮市出身。2022年に長野県に移住し三俣山荘で4シーズン働く。道なき道を歩く楽しみを知り、藪漕ぎ沼に首までズブズブ。愛しの薮はハイマツ。沢を歩くと毎回ズボンのお尻が破れてしまう。
■SNSアカウント
Instagram:@bee___ko
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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