町のはずれにある、小さな交差点｜アウトドアタウンときがわで里山遊び＃29

「アウトドアといえば、ときがわを思い浮かべるような”アウトドアタウン”にしたい！」。そんな思いを抱き、地元の人を巻き込みながら日々さまざまな活動を行なう、野あそび夫婦のアオさんこと青木達也さんが、ときがわの自然の楽しみ方や、そこで暮らす魅力的な人たちなどを紹介します。

町のはずれにある、小さな交差点

私たちが運営するアウトドアショップ「GRID」は、もともと木工機械屋さんの大きな倉庫の一角を改装して造ったお店だ。いまではコーヒースタンドが入ったり、木工作家さんのシェアスペースとして使われたりして、すっかり複合施設のような場所になった。

それをきっかけに、倉庫全体を「TERMINAL TOKIGAWA」と名付けたのが、たしか2年前くらいのこと。“アウトドアタウンに遊びに来る人の交差点みたいな場所になったらいいよね”と、入居しているメンバーみんなで話しながら決めた名前だった。

この夏の三連休。「あのとき話していた“交差点”というイメージが実現してきたなぁ」と、ふと思う瞬間があった。この日は、となり町・小川町からキューバサンドのキッチンカーが来てくれて、パンの焼ける香ばしい匂いとスパイスの香りが、お店の周辺あたりまでふんわりと漂っていた。匂いにつられて足を止める人もちらほら。屋外のベンチまわりには自然と人が集まり、いい空気が流れていた。

HOMIES COFFEEのめぐみさんは、所沢から車で通ってきてくれているスタッフ。登山が趣味ということもあって、お客さんとはコーヒーの話も山の話も盛り上がっていた。「店員さん」と「お客さん」っていう堅い関係じゃなくて、ちょっとした共通点でゆるくつながっていく感じが、このお店らしい風景だ。

イートインスペースでは、スタイリストの近澤一雅さんが手がける「cancan CAPS」のポップアップも開催していた。シンプルだけど奥深いゲームに、大人たちが夢中になっている。初対面の人同士が自然と話し出しているようすを見ると、なんだかうれしくなる。

GRIDの2階には、最近独立したばかりのカメラマン・めんでぃー君が入居していて、この日はクライアントさんと撮影の仕事中。ちなみに彼はGRIDの店番もしてくれている。撮影と接客、二足のわらじが当たり前にできるのも、この場所ならではのおもしろさだと思う。

1日のなかで、いろんな人が出会い、交わり、関わっていく。目の前に広がっていたこの風景は、まさに2年前に描いていた“交差点”そのものだった。

気がつけば、「この町で何か始めてみたいんです」とか「移住って、どうやってるんですか？」なんて相談を受けることが増えていた。お客さんというより、すでに“この町のプレイヤー”みたいな感覚で関わってくれる人たちも多い。なかには、自分で企画を考えて持ち込んでくれたり、そのままこの場所で一緒に働くようになった人もいるくらいだ。

ただモノを売るだけじゃない。人と人の距離がふっと近づいて、そこから新しい何かが芽を出す。

そんな瞬間に立ち会えるのは、この「町のはずれの交差点」でGRIDとTERMINAL TOKIGAWAという場を続けてきた、自分へのちょっとしたご褒美のようにも感じている。