BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • VINAVIS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo
  • タビノリ

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

クライミングはもっと自由になれる──「Mellow Jam」が示す新しいカルチャーのかたち

2026年4月18日、埼玉県新座市。心地よい春の空気のなか、クライミングジム「Next Gen」の前には、この日開催されるイベント「Mellow Jam」に参加する多くの人が集まっていた。受付開始直後から伸びた長い列が、このイベントの注目度の高さを物語っている。

クライミングジムと聞くと、鍛え上げられた身体やハードなトレーニング、技術を磨き、グレードを競うストイックな世界を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、この日会場に流れていた空気は、それとは明らかに違っていた。ここに集まった人たち共通の目的が、勝ち負けや成果ではなく、もっと自由で幅広い視点でクライミングに触れることだったからに違いない。

文◉小川郁代 Text by Ikuyo Ogawa
写真◉宇佐美博之 Photo by Hiroyuki Usami

登るだけにとどまらない「カルチャーとしてのクライミング」

▲「Mellow Climbing」を率いる世界的クライマーのショーン・ラブトゥ。

「Mellow Jam」は、映像制作を通じてクライミングの新しい価値観を発信する、アメリカのメディアクリエイティブ集団「Mellow Climbing」と、アウトドアブランド「THE NORTH FACE」によるコラボレーションイベントだ。映像・音楽・アート・セッションを通して、「登ること」だけにとどまらない、「カルチャーとしてのクライミング」を体験する場として企画された。

会場となった「Next Gen Bouldering」は、東京五輪銀メダリストでプロクライマーの野中生萌が、2025年にオーナーとして立ち上げたボルダリングジム。世界最大級規模の壁を備え、競技レベルのトレーニングにも対応しながら、レベルや目的を問わず多様な人が交わる「開かれた場」として設計されている。この日はここが、コミュニティの情熱が交差する、ムーブメントの発信基地となった。

音楽とアートが彩る、五感を刺激する空間演出

開放的なエントランスを抜け、奥に広がるウォールスペースに足を進めると、そこにはこの日のための特別な空間が用意されていた。照明を落としたエリアには大型スクリーンが設置され、この後に控えるフィルム上映の時を待っている。その横では、クライミングシーンではおなじみの「Jazzy Sport」のDJが、ゆったりとしたグルーブで場の空気を支配する。

仲間との会話を楽しんだり、このイベントのためにセットされた課題をオブザベーション(下見)したり、フィルム上映までの時間を思い思いにすごす参加者の姿を眺めていると、DJブースの横に設けられた大きなパネルの前で、ステンシルアーティストの赤池完介が、スプレー缶を手に動き始めた。

▲完成した作品は、参加者によるじゃんけん大会を勝ち抜いた16名への、スペシャルなプレゼントとなった。

16枚の白いTシャツを繋げたものをキャンバスに見立てて、型紙をあて、スプレーやローラーで着色し、剥がす。その繰り返しのなかで浮かび上がった像が、やがて一つのアートとして完成する。複雑に重ねられる形、一瞬にして色が乗るスピード感、型紙をはがす瞬間の緊張感。ライブペインティングならではの臨場感が、多くの人の目を釘付けにした。

世界をめぐる「Mellow Film Tour」日本初上陸

開場から1時間ほどが経過すると、いよいよ本日のメインイベントの一つ、「Mellow Film Tour」日本プレミア上映のスタートだ。世界各地を舞台とする、4本のクライミング映像作品で構成された今回のツアー。2026年2月から北米やヨーロッパをめぐり、日本では今回が初の上映だ。

▲フィルムの上映後には、「Mellow Climbing」を率いるショーン・ラブトゥ(中)によるトークセッションも行なわれた。

世界屈指の難関ルートへの挑戦や、専門外の領域へのチャレンジなど、4作品にはそれぞれに異なるテーマが描かれている。それは単なる成功までの記録にとどまらず、そこにたどり着くまでの苦悩や葛藤など、クライマーの内面に触れるリアルな姿が、映像と音を巧みに操るMellowらしい表現で、ストレートに映し出されている。少しでもクライミングを経験したことがあれば、環境や難易度はまったく違っても、同じような心の動きに共鳴する部分があるだろう。2時間余りにわたる上映は手に汗握る時間だったが、ほとんどの人が席を立つことなくスクリーンに見入っていた。

遊び心と異次元の技術が交差する「セッションタイム」

突然変化した照明が、クライミングセッションのスタートを告知する。フロアの雰囲気を一気に盛り上げるのは、東京の街並みや自然の風景などをクライミングウォールに投影するプロジェクションマッピングだ。いつものクライミングウォールが、光のレイヤーによって刻々と表情を変え、イベントならではの華やかさと没入感にあふれる未体験空間へと変わる。

メインのウォールには、この日だけのために、ショーン・ラブトゥとその仲間たちがグレード別にセットした特別課題が用意され、自由にトライすることができた。最初は戸惑っていた参加者も、次第に壁にとりつき始め、壁を見つめる人の輪がどんどん広がっていく。なかには、手にソックスをはめ、あえて滑りやすい状態で登るように設定された課題など、遊びの要素にあふれたものもあり、あちこちから参加者の笑い声が聞こえた。

プロクライマーによるデモンストレーションでは、重力を手なずけたような異次元の動きに、参加者からの熱い視線が集まった。ただ、こちらも単に力を見せつける場には収まらない。とくに注目を浴びたのが、ゲーム性の高いペアクライム課題。一人では絶対に登れない設定を、二人のクライマーがお互いの体をホールドのように使って登る課題に、一流クライマーが見せる戸惑いや、それをみごとに解決していくようすに、会場はひときわ大きな盛り上がりを見せていた。

自分だけの「一着」を作るカスタマイズ体験

一方で会場内には、先ほどライブペインティングを行なった赤池完介による、ステンシルカスタムプリントに並ぶ長蛇の列ができていた。この日のために用意された型紙から、その場で好みのロゴや絵柄をチョイスして、自由にレイアウトしてプリントができる特別なセッション。限定コラボTシャツ「TNF x Mellow Tee」がさらに思い出深い、特別な1枚になった。

多様性が生み出す、リラックスしたコミュニティの形

長時間のイベントの間、普段からここに通う人やイベントのために遠方から駆け付けた人など、200人ちかくの参加者で会場はつねに賑わいをみせていた。特徴的なのは、参加者の年齢や国籍がじつに多様なことだ。親子連れのキッズクライマー、ベテランのカップル、男女を問わず一人で訪れている人の姿も目立つ。英語はもちろんいろいろな言語が飛び交い、だれもが自然に同じ空間を共有していた。

知り合いとの再会に話が弾むようすや、憧れのクライマーとのツーショットに浮かべる満面の笑み。このときだけの特別な課題を満喫するクライマーもいれば、クライミングシューズを履かずに、長時間この場の空気を楽しんでいる人も数多くいた。

夕方17時30分。「Takao Beer」による限定ビールの提供が始まると、会場の雰囲気はさらにリラックスしたものへと変わっていった。セッションで身体を動かしたあとに一杯を楽しむ人もいれば、まだ登り足りないといったようすで壁にとりつく人、音楽に体を揺らす人。登るか登らないか、登れるか登れないかの違いは、もはやここには存在しない。

クライミングの価値観を「MELLOW」にアップデートする

「Mellow Jam」の空間では、音楽、アート、映像は、クライミングを盛り上げるための要素ではなく、完全に同列のテーマとして捉えられていた。その背景には、まさにショーン率いる「Mellow Climbing」の考え方がある。クライミングを競技やトレーニングとしてだけでなく、ライフスタイルやカルチャーの一部として捉える視点。「Mellow Jam」は、それを実際の体験として提示する、明確な場として成立していた。

▲ザ・ノース・フェイスのサポートクライマーたちも集まった。左から伊藤ふたば、野口啓代、楢崎智亜、ショーン・ラブトゥ、鈴木雄大、平山ひじき、平山ユージ。

経験がないから、上手くないから、いっしょに登る人がいないからと、一歩を踏み出せないでいる人にとって、「Mellow Jam」は、最高の入り口を提供したに違いない。一過性のイベントとしてだけでなく、クライミングに対する価値観を広げる役割として、これからも日本のクライミングシーンに新たな深みと彩りを与え続けていくだろう。見るだけでも、触るだけでも、その場にいるだけでもいい。登れるか、登れないかではなく、どう関わるかを自由に選べるクライミングがあってもいい。そう思わせてくれる一日だった。

SHARE

PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

No more pages to load