
【ほかの山域とは、ココが違う!】”北アルプスならでは”の重要ポイント

PEAKS 編集部
- 2025年09月04日
日本一の大山脈ともいえる北アルプスは、ほかの山域とは少し異なる特徴をもっている。
たとえば、高山が立ち並んでいること、登山者の数が多いこと、テント場の気象条件が厳しいこと、など。
そんなポイントを理解していれば計画が立てやすく、現場で困ったときも対処しやすい。
編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋庄太郎
イラスト◉小野正統
重要ポイントを頭に入れることが安全登山の第一歩
自分の地元の山などほかの山域に慣れていると、北アルプスでは戸惑うかもしれない。その要因は、高山ゆえの気象条件や地形、山小屋の豊富さや登山者の混雑ぶりなど……。北アルプスならではの特徴があり、それを踏まえて行動すればトラブルを未然に防ぎ、快適にすごせるようになる。
登山道を一例に取ると、ほかの山域と大きく異なるのは岩場を通過して当たり前というハードさ。とくに穂高岳の稜線や大キレット、剱岳などは、そこが登山道とは思えないほど荒々しい。ヘルメットの着用率が日本でいちばん高い山脈は北アルプスだろう。また、雪渓上にルートが引かれている山域も、北アルプス以外はほとんどない。
白馬大雪渓や剱沢雪渓をクランポンなしで通過するのは危険すぎる。
そのほか、詳しくは以下を参照。これら重要ポイントを頭に入れることが安全登山の第一歩だ。




「北アルプスならでは」8つのポイント
8つのポイントをご紹介。
気象条件・標高
1.気象条件の厳しさ
夏でも涼しく、強烈な風が吹く。北アルプスは南部で標高2,500m、北部で2,000mくらいから森林限界を超え、風を遮る背の高い木がなくなって、強風の影響をもろに受ける。雨が降れば嵐のようになり、テントは吹き飛ばされかねない。低体温症の危険も!
2.3,000mを超える標高
気温は標高が100m高くなるに従って約0.6℃低くなるといわれ、海抜0mが25℃のとき、標高3,000m地点では7℃に! 酸素濃度も低く、人によっては2,000mくらいから高山病の症状が出始め、3,000mでは息苦しさを感じる人が増える。夏でも防寒着を持ち、空気の薄さで頭痛がしてきたら、無理せず下山を。
山小屋・テント場・登山道
3.充実した山小屋
人気山域ゆえに山小屋の数は、ほかの山域を圧倒的に上回る。有料だが、通過時に水を買ったり、トイレを利用できたりと、ありがたい存在だ。サービスが充実した小屋が多く、「食」と「寝」の道具は持っていく必要がない。テント場をもつ山小屋では、予約をすればテント泊の人にも夕食や朝食を提供したり、休憩場や自炊室を開放しているところもある。
4.稜線上のテント場
南アルプスや八ヶ岳などのテント場の多くは稜線よりも少し下がった場所に位置しているのに対し、北アルプスは稜線上に多い。だから風の影響を受けやすく、テントは確実に地面へ固定しなければならない。それなのに地面には岩や石が目立ち、ペグが刺さりにくくてテントを固定するのに難儀する。非自立型のテントが適していないのも、そのためだ。
5.どこまでも続く登山道
整備された登山道が縦横に延び、道標も多い。しかも森林限界を超えた場所の縦走路は見晴らしがよく、晴れていれば遠くまで登山道が延びているようすが確認できる。それゆえに、じつは森に囲まれた低山よりも道迷いは起こしにくい。一方、驚くべき急峻な岩場にも登山道がつけられているのは、北アルプスならでは。滑落や転倒の危険は日本一だろう。
トイレ・動物・水と食料
6.数が少ないトイレ
主要な登山口と山小屋にはトイレがあるが、大半は有料。どこも現金払いなので、小銭を用意しておこう。登山口でも山小屋でもない場所に設置されているのは稀だ。状況に応じて、携帯トイレを使いたい。森のなかや岩陰がある場所では用を足しやすいが、森林限界を超えると身を隠す場所が少ない。できるだけ山小屋を通過するときに済ませておこう。
7.気が抜けない危険な動物
日本のほかの山域同様、北アルプスでもツキノワグマの目撃が増え、近年も上高地の小梨平や折立のキャンプ場はクマが出没するために一時閉鎖されていた。ゴミや食料の管理が重要だ。上高地にはサルも多く、人慣れして近くを歩いているが、想像以上に狂暴なので注意。ハチに刺される人も多い。意外とカやブヨは少ないが、時期によってはアブが厄介だ。
8.簡単ではない水と食料の入手
稜線には水が湧いている場所が少なく、水は山小屋に頼る。その水はポンプでくみ上げたり、手間をかけて雨水をためたものなので、有料なのは仕方ない。ペットボトルも販売されているが、ヘリコプターの荷上げ代が加算されるので高価である。食材も同様で、下界から運び上げるためにパンや菓子類も数割増しの価格だ。
※この記事はPEAKS[2025年9月号 No.174]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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