
20座に到達|100 MOUNTAINS, 100 STORIES. -日本百名山、映像と巡る150日‐vol.3

TAKE
- 2025年08月22日
INDEX
「日本百名山全踏破」に挑戦中のTAKEさん。
スピードアタックではなく、映像撮影をしながら、日本の登山文化や山の魅力をたくさんの人に伝えることが目的の旅だ。
約5カ月間(150日)をかけて歩く“旅の裏側”の記録第3回目は、皇海山から。
編集◉PEAKS
文・写真◉TAKE
最難関、皇海山クラシックルート
6月12日、筑波山を下山した僕は、この旅で最初の“難関”と言われる皇海山へ向かっていた。登山口は銀山平。静かな山里に佇む温泉施設があり、普段なら前泊で利用する人も多い。だがこの日は残念ながら設備故障で、湯煙はおあずけ。長丁場の山行前に温泉でほぐす計画は消えた。
皇海山といえば、かつて群馬県側・不動沢ルートが一般的だったが、林道崩落により現在は栃木県側のクラシックルートがメインとなっている。距離22km、コースタイム約15時間のロング&ハードな道のりだ。
夜明け前、午前4時前にスタート。ヘッドランプの光だけを頼りに真っ暗な車道を1時間歩くと、赤い鳥居が現れた。ここからが登山道のようだ。水音が響く森を進み、庚申山荘へたどり着いた。営業はしていなかったものの、そのスケールや佇まいから、かつてのにぎわいを感じた。
そこから鋸山までは細かいアップダウンが連続。白山を越えると突如、90度真下に下りるハシゴが現れた。足元が吸い込まれそうな高さに、思わず息を呑む。ハシゴを下り切ったら、今度は急な岩場の登り返し。少し不安になる細めのロープを頼りに、なんとか崖を登り切った。距離に加え、この激しい登り下りこそが“最難関”の所以だろう。
鋸山にたどり着くと、皇海山までの稜線がようやく姿を現した。ゴールはまだ遠い。息を整え、一歩一歩を重ね、ついに皇海山山頂へ。この旅12座目の登頂を果たした。

帰路は庚申山から別尾根に下り、名物の食虫植物・庚申草を探したが、季節が異なったのか姿は見つからず。代わりに、熊笹に隠れた鹿の糞がびっしり。日光の鹿被害は聞いていたが、ここまでとは……。
ふと振り返ると、鋸山から皇海山までの長い稜線が陽に照らされていた。あの道のりを歩き切った達成感が、疲労の奥からゆっくりと湧き上がる。
天気が味方につくも……
6月10日の筑波山までは雨予報が続き、梅雨らしい空気に包まれていた。ところが皇海山を終えた12日以降、天気予報は一転して晴れマークが並んだ。西日本では史上最速の梅雨明けが発表され、空はすっかり夏色になった。
「めっちゃついてるじゃん!」
心のなかでそう叫んだ。
この好天に背中を押され、一気に行程を加速させた。皇海山の翌日は男体山・日光白根山、そのあとは両神山、武尊山、谷川岳、浅間山、四阿山、草津白根山へ。6月18日までのわずか1週間で20座に到達した。


しかし、順調さの裏で疲労の影も差す。朝が起きづらくなり、ふとモチベーションが落ちかける瞬間があった。さらに、懸念していたヒザの状態が悪化。サポーターやトレッキングポール、下山後のアイシングとマッサージを習慣にして、少しずつ体をなじませた。
ハイペースとはいえ、まだ20座。これを5倍近く続けると思うと、果てしなさに一瞬たじろいだが、それでも進むしか選択肢はないのだ。
火山と規制
旅を進めるなかで、火山による入山規制は避けられない。浅間山や草津白根山は一部のエリアや登山そのものが制限され、今後計画している岩手山や阿蘇山も同様だ。
群馬県の草津白根山は火山噴火警戒レベル1だが、草津町の独自規制により登山道は閉鎖している。国道は通れるが、ほとんどの場所で駐停車は禁止されている。
日本百名山を目指すうえで避けては通れないが、立ち入りできない山頂に固執することもできない。今回は到達可能な最高地点をゴールとし、国道最高地点から湯釡と本白根山を望んだ。

未知の山域へ行くということ
僕はもともと慎重な性格で、未知の場所に飛び込むのは得意ではない。とくに「北関東以北」という響きには、遠く厳しいイメージを抱いていた。
だが、この旅ではそうもいっていられない。初めて踏み入る山々が次々と現れる。実際に訪れてみれば、そこには“日本百名山”と呼ばれるだけの確かな魅力があった。
群馬県の武尊山では、山頂から中ノ岳や剣ヶ峰へと伸びる鋭い縦走路に心を奪われた。長野県の四阿山では、隣の根子岳まで続く緩やかな稜線と、山肌を覆うレンゲツツジの橙色が印象的だった。


これまでアルプスを中心に登ってきたが、全国をめぐってこそ出合える景色がある。日本百名山は、ただのリストではなく、日本の自然の多様さを教えてくれる地図そのものだと、歩くほどに実感している。
次へ続く道
ここから先は上信越、東北、北海道へと突入し、いよいよ旅感が高まってくる。
今回のプロジェクトをとおして、日本百名山だけでなく、”旅”をするということや、なにかに挑戦するということについても伝えていきたい。その答えは僕自身も未だわかっていない。しかし、多くのエールを受け取り、この挑戦の意味を感じている。撮影の裏側や車中泊、全国を旅するようすなども含めて、伝えられることは残していきたい。そのためにも安全第一で旅を続けていく。
──だが、この先で次々と不運が訪れることを、このときの僕はまだ知らなかった。
『100 MOUNTAINS, 100 STORIES.』公式サイト
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