
クライミングのレストを兼ねて、バンクーバーのアウトドアショップと画材屋めぐり|筆とまなざし#431

成瀬洋平
- 2025年08月20日
アウトドアギアはずいぶん安いが、レンタカーも画材もカナダは高い!
7月半ばをすぎると日本の友人はみんな帰国し、キャンプ場は心なしか静かになったようだった。キャンプ場近くからダウンタウンまでは定期バスが走っており(一回の乗車は2ドル。1デイパスが4ドルで土日は無料)、買い出しやシャワー、ダウンタウンに近いスモークブラフの岩場へは行けるのだが、もっと自由に行動できるようにしようとレンタカーを借りることにした。16日間で13万円ほど。毎年訪れているイタリアよりずいぶん高いが、ひと月借りるよりはマシである。
運よく、バンクーバー空港にあるレンタカー会社で安い車を見つけたので、レストがてら日帰りでバンクーバーに行くことにした。ビジターセンターの前でバンクーバー行きのバスに乗り込む。ダウンタウンのウォーターフロント駅でバスを降り、市バスを乗り継いでMECへ向かった。
海外の街に来たときの楽しみのひとつが、アウトドアショップと画材屋を訪ねることだ。MECはカナダ最大のアウトドアショップで、アメリカのREIのような存在である。主要都市にはたいてい大型の店舗があり、一流ブランドのギアはもちろん、質の高いオリジナル商品が手頃な価格で販売されている。MECは「Mountain Equipment Coop」の頭文字から「メック」と呼ばれていたのだが、いつの間にか「Mountain Equipment Company」になっていておどろいた。なんだか世知辛さを感じてしまう。ちなみに、MECは広く浅くといった品揃えで、クライミングギアならスコーミッシュの「Climb On」が圧倒的にすばらしい。食材は日本よりずいぶんと高いカナダだが、アウトドアギアはヨーロッパブランドのものでもずいぶんと安くておどろいた。以前からほしかったエアーマットを見つけ、ディスプレイ品で汚れているからと割引価格で手に入れることができたのはラッキーだった。
その後、MECの近くに見つけた画材屋「Rath Art Supplies」へ。店の前には紳士を模った立て看板が置かれていて迷わずに見つけることができた。旅先で画材屋へ行くのは、そこにしかない水彩絵具や文房具に出逢えるからである。各地で手に入れた絵具は、自分の絵にはなくてはならない色になったものも多い。狭い店内にはぎっしりと画材が並べられ、絵具はレジの裏にあった。予想どおり、見たことのない絵具が目に入った。
「よかったらこれを見てみてね」
店員の女性がカラーチャートを渡してくれた。しばらく悩んで4色を厳選。しかしそのなかの一色が欠品とのことで、残りの3色を買うことにした。
「合計65ドルです」
その言葉に一瞬頭の中が「?」になった。3色で65ドル?! 内心、1色欠品していて良かったと思いつつ、ここで引き下がったら絵描きの名に恥じると、思いきって買うことにした。レシートを見ると1色16ドルが2本と1色26ドルが1本。税込みで合計65ドル。チューブ一本3000円近い水彩絵具なんて聞いたことがない。さぞすばらしい絵具なんだろうな……使うのが楽しみのような怖いような。これも旅の楽しみか。細かいことは気にしないようにと思いながらも、なんだか強烈なパンチを食らった気分で店をあとにした。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。
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