
ピナレロ・ドグマXとX5に乗って考える「エンデュランスロードの真意」|PINARELLO
安井行生
- 2026年03月27日
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ドグマFと双璧を成すエンデュランスロード、ドグマX。その特徴であるX-STAYSを受け継いだ弟分のX9やX5。どうしてもレーシングバイクであるドグマFやFシリーズに注目が集まりがちだが、ピナレロの新世代エンデュランスロードの出来はどうなのか。ピナレロの専門店「ペダリストピナレロショップ」青山店店長の福本 元さんとジャーナリストの安井行生というピナレロに造詣が深い2人が、ピナレロのエンデュランスロードについて語り合う。
ドグマXとX5

PINARELLO DOGMA X
フレームセット:1,100,000円(税込)〜
2023年に発表されたドグマXのコンセプトは、「アマチュアライダーが走りを楽しむためのバイク」。それまでピナレロはエンデュランスロードを「レースで戦える長距離対応・快適性重視バイク」として設計していた。パリ~ルーベを戦うレーサーでもあったのだ。しかしドグマXの発表をもって、ピナレロのエンデュランスロードは立ち位置を変える。新世代エンデュランスロードであるドグマXは競争をしない。要するにピナレロは、ハイエンド帯のバイクをレースとそれ以外に切り分けたのだ。

とはいえ設計に妥協はなく、ドグマF同様の素材(東レのT1100G)を使い、軽さと剛性を両立。空力性能もドグマF譲りのフレームワークを採用する。最大の特徴はX-STAYSである。これは、シートステー上部を二股に分けてシートチューブに接合する作りのこと。一見すると強固なトラス構造になり縦方向の剛性が上がってしまうように思えるが、メーカーの説明によると「シートチューブの2点に力を分散させ、サイクリストへ伝わる路面からの振動を大幅に抑制することで、ペダリング効率を犠牲にすることなく、優れたライドコンフォートを実現する」とのこと。もちろんジオメトリはエンデュランスロードというコンセプトに最適化されたものとなっており、タイヤクリアランスは35mmを確保する。

PINARELLO X5(105 Di2)
完成車:¥850,000(税込)
SPEC
- フレーム:東レ T700 カーボン
フォーク:ONDA カーボンフォーク
コンポーネント:シマノ 105 Di2(12速)
ブレーキ:シマノ 105 油圧ディスク
ホイール:MOST ULTRAFAST 45DB カーボン
そんなドグマXの弟分となるのがセカンドグレードのX9とミドルグレードのX5。シルエットはドグマXに似るが、フレームの設計はXシリーズ専用となる。特徴はドグマXのアイコンであるX-STAYSがこれらにも採用されたことだ。ドグマXではX-STAYS部にシートステーブリッジが設けられるが、Xシリーズでは搭載せずシンプルな形状となっており、よりしなやかな乗り心地を実現しているという。

Xシリーズは、トップモデルのX9を筆頭にX5、X3、X1(X3とX1は2024シーズンからの継続)というラインナップ。X9はフレームの一部に東レのT900という高性能カーボンを使用。X5はT700が素材となる。どちらも完成車のみの展開で、X9はデュラエースDI2完成車でカーボンホイール(モスト・ウルトラファスト45DB)を履いて208万円。X5は105 DI2仕様で、同じカーボンホイールを装備して85万円となる。

ドグマXの包容力

安井:今回は福本店長がドグマXに、僕がX5に試乗しました。まずはドグマXの印象からお願いします。
福本:ペダリングに対する反応はドグマFに遜色ないレベルですね。パワーをかけたときの加速性能や高速域への伸びは「エンデュランスロード」というコンセプトから想像する範囲を超えてます。でもドグマFと比べると、気を遣わずに身を任せられる安心感がちゃんとある。そこはいいエンデュランス性が込められてると思います。
安井:「ドグマXはアマチュアライダーに向けたハイエンドバイクになった」とのことですが、あくまで「速く走るための自転車」であることには変わりないんですね。ピナレロらしいです。
福本:それでいてポジションはアップライトなので、「選手のようなレーシーなポジションは無理だけど、楽しく速く走りたい」という人には最適です。むしろ、ドグマFではコラムスペーサーを入れないといけないポジションでも、ドグマXではステムベタ付けにできたり、リーチが短めなのでステムを長くてきたりと、ドグマFよりもかっこよく組むこともできるケースも少なくありません。

安井:あぁ、それはありますね。楽ちんポジションだけどダサい、というバイクじゃない。
福本:そう。自然な体勢がとれるってすごく大事ですからね。バックセクションの独特の形状のおかげなのか、振動の収まりもいいと感じますし、100km、150kmを走った後の疲れ方は全然違います。僕ら一般アマチュアサイクリストにとって、ウィークデーにいかに疲れを残さないかという要素も重要です。月曜日からが本番ですから。
安井:「大人なサイクリスト」には必要な自制心ですね。
福本:そう。いざ「ドグマを買う」となったとき、「どうせならプロ選手と同じドグマFにしたい」という方は多くいらっしゃいます。でもドグマXは「アマチュアサイクリストのために作られたドグマ」になりました。車でいうと、ドグマFはレーシングカー。ドグマXは上質でスポーティーなセダンというか、GTカー的な性格です。このドグマXの許容性は一度は体験していただきたいと思います。無理のないサイクリングライフのいい相棒として完成しているバイクです。
X5の万能性

安井:僕はミドルグレードであるX5に乗らせてもらいました。
福本:今までピナレロのミドルグレードは廉価なアルミホイールが入っていることが多かったんですが、新型X5は最初からカーボンホイールが付いてきます。
安井:このピナレロのオリジナルカーボンホイール、いいですよね。レベル高いです。
福本:そうなんですよ。105Di2完成車で85万円という価格は、他社と比較するとやや割高には感じられますが、カーボンホイールを履いたピナレロの完成車と考えると魅力的だと思います。塗装もこの価格帯のフレームとしてはかなり綺麗ですし。

安井:85万円は安くはありませんが、Di2とカーボンホイールが最初から入ってるので、「ホイールをアップグレードすればさらによく走るようになるだろう」みたいな意味不明なインプレを書く必要がないですね。このままでほぼ完成してます。実際の走りですが、これも「ちゃんと速く走れるエンデュランスロード」です。ふわふわなだけの安楽バイクではない。安定感・安心感というエンデュランスロードに求められる性能は備えていながら、踏めばしっかりと応えてくれる。僕はコブとかドグマKのときから試乗させてもらってますが、ピナレロのエンデュランスロードは常にそういうバイクでした。快適性を重視してはいるけれど、あくまで速く走るための乗り物。
福本:そうなんですよ、なかなか絶妙なもの作りをしてますよね。カテゴライズとしてはエンデュランスロードなんですが、多くの人が想像するエンデュランスロードとはちょっと違う。

安井:そう思います。Xシリーズって、「どうせ速く走らないんだからこれでも乗っときなよ」ってバカにされてる感じが全くないですよね。「どうせお前は速く走らないんだから」って見下されてる感がない。「ロードに乗るんだから速く走りたいだろ?快適に、でも速く走ろうぜ」って言ってくれてる感じがします。それに、日本でのロングライドって信号のストップアンドゴーの繰り返しですからね。適度な剛性と反応性は必須ですよ。そういう意味では、ドグマXやXシリーズは“正しいロングライドバイク”なのかもしれません。
福本:そうなんですよ。僕らは今まで「エンデュランスロードって、快適で長距離が楽な自転車です」という説明をしてきましたが、ちょっと安易な表現だったかなと思います。僕らが改めなきゃいけないのかもしれません。便利な表現なので、そこに甘えてた部分はある。
安井:確かに。それはありますね。
エンデュランスロードの意識改革

安井:最近のレーシングバイクは性能を追求したがゆえに尖がりまくった自転車になり、一般人の使用目的とは乖離をしはじめたと感じます。今こそ「一般人のためのロードバイク=エンデュランスロード」と意識を改めたほうがいいんじゃないかと思うことがあります。その一方で、ヘッドチューブが長くていかにも遅そうなエンデュランスロードは欲しくならないという気持ちも理解できる。レースはしない人でも、かっこいいバイクが欲しいですよね。そういう意味で、Xシリーズはすごくいい立ち位置にいる自転車だと思います。「見た目にも個性があり、速く進ませることも忘れない」というエンデュランスロードって、意外とどこも作ってない。
福本:実際は、無理してドグマFに乗ってらっしゃる方もいると思うんです。プロユースバイクって魅力的ですから。それでもあえてドグマXを選べる人は「この人、分かってるな」と思いますね。
安井:ドグマFと同じ金額を出してドグマXを選べる人ってかっこいいですね。
福本:そう。僕は競技出身なので、今ドグマを買うとしたらまだドグマFを選ぶと思います。ポジションの作り方も競技志向ですし。トレーニングをして体を作ればレーシングバイクを乗りこなせると思います。でも、そこまでのレベル維持するのって、加齢や仕事を考えるとだんだん難しくなってくる。だから、意識を変えてピナレロの“X”を買ったときが、「本当のサイクリストになれたとき」なんじゃないかと思ってます。
安井:いい言葉ですね。ありがとうございました。

PROFILE

福本元
中学生でロードバイクに乗り始める。高校で自転車競技部に入り、
ペダリストピナレロショップ青山

ピナレロを専門に扱うワンブランドショップ。青山と横浜に2店舗を構える。商談と作業は完全予約制(予約はHPの予約フォームから)で、ピナレロというブランドに相応しい落ち着いた接客を受けることができる。ロードバイクスクール事業も実施しており、青山店の地下にはフィッティングルームがある。
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