
世界屈指のヒルクライムレース台湾KOMから派生したKOM PACIFIC CLASSICでフォンチュンカイが勝利
山口
- 2025年10月30日
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10月26日(月)台湾を代表するヒルクライムイベント「Taiwan KOM Challenge」が、地震および洪水被害によりコースが変更され、花蓮からスタートする「2025 Taiwan KOM Pacific Classic」として開催され、宇都宮ブリッツェンのフォン・チュンカイ(馮俊凱)が勝利した。
KOM Challengeから派生したクラシックレース

「2025 Taiwan KOM Pacific Classic」は世界的に名高い「Taiwan KOM Challenge」から生まれた新大会。従来のコースは海抜0mからスタートし、太魯閣峡谷を抜けて標高3,275mの武嶺を目指す世界でも屈指のヒルクライムレースだったが地震の影響と洪水による被害が重なり、復旧工事が長引いている。
そのため「2025 Taiwan KOM Pacific Classic」ではコースを変更。花東エリアの太平洋岸を走破し、太平洋を望む牛山を2度登り、玉長公路で海岸山脈を横断、そこから花蓮・塩寮へ帰還する距離203km、獲得標高2,300mという難度の高いコースとなった。

トップアスリートも完走を目指すホビーライダーも同時に走れる貴重な大会

この大会の特徴はKOM Challengeと同じく、トップ選手とホビーライダーがほぼ同時に走れる点だ。パレード走行中にはトップ選手と並んで走れることもKOM Challage以来の名物となっている。
このため開催が月曜日にもかかわらず台湾をはじめ、アメリカ、フィリピン、ドイツ、インドネシア、イギリス、シンガポール、オランダ、中国、日本、カナダ、タイ、イタリア、ベルギー、スペイン、フランス、ブルガリア、香港、マレーシア、マカオ、オーストラリア、韓国など、22か国から200人弱の選手が参加。今年はフォンのほか、ポギー・グスト・リュブリャナに所属するリー・ティンウェイ(李廷威)などの台湾のトップ選手が参戦した。
フォン・チュンカイが独走し優勝

レースは6時30分に花蓮の新天堂楽園をスタート。この日は時折の雨と強い向かい風が加わり、厳しいコンディションとなった。

レースは途中、20km地点でリーら4人の逃げ集団を形成したが、その後吸収。集団は牛山、玉長公路、安通を経て再編と分裂を繰り返した。さらに終盤に差し掛かると、牛山の3つ目の登りを越えて勢いに乗ったフォンが先頭へ。「後半は強い向かい風になると読んで体力を温存した」とレース後にコメントしていたが、残り10kmの上りで渾身のアタックを決め、5時間11分37秒98のタイムで独走で優勝した。
フォンは2021年以来の戴冠で、旧ルートと新ルートの双方で総合優勝を達成した唯一の選手となった。37歳を目前に、「若い頃ほど登坂力はないが、今は無駄にアタックしない。状況を読む経験がある」と語るフォン、前夜日本から帰国したばかりというから驚きだ。
また、2位のリー・グアンシェン(李冠賢)は5時間12分18秒03でフィニッシュ。5か月前の中国・河南での落車で右肩甲骨骨折・気胸・肺出血によりICUへ。約6週間でトレーニングに復帰し、今大会で見事な走りを見せた。「完走自体が嬉しい。2位は想像以上」とコメント。一方、序盤から攻め続けたリーはKOM(登坂王)賞を獲得し、「今日はフォンさんが本当に素晴らしかった」と称えた。
女子トップのシュー・シューウェイは平均34㎞で優勝
女子はシュー・シューウェイ(許書瑋)が、男子主集団に食らいつく戦略で快走。5時間51分19秒64(平均時速34㎞/h)で女子1位に加え、スプリント賞と山岳賞も獲得。「これまでで最も長いレース。帰路の雨と向かい風は厳しかったが、変化に富んで楽しかった」と笑顔で語った。
完走することがこの大会の大きな目的

トップライダーだけがこの大会の主役ではない。完走を目指すライダーたちも、もう一つの主役だ。203㎞を制限時間8時間で走るには、平均速度25.4km/hを維持する必要がある。今回は往路は追い風、一方復路は向かい風となり、単独で走る選手たちを苦しめる結果となった。そのため、公式のタイム計測が行われる8時間以内に走り切れたライダーは78人となった。しかし、制限時間のあとも完走を目指し走り続けたライダーが多くいた。
日本でも本格的なレースとしてのグランフォンドが定着してきたが、交通規制の都合で制限時間が厳しいのは事実。その点、制限時間にゆとりのあるTaiwan KOM Pacific Classicは観測目的に楽しめるヨーロッパ式のグランフォンドに近いといえる。日本から気軽に行ける台湾でこうしたレースが開催されるのはうれしいところだ。
回収バスに乗らず、最後まで走り続けた最終走者の駱宜新さん。ゴールして主催者の中華民国自行車騎士協会 ホー秘書長に出迎えられた。「お腹の調子が悪く、スタートしてすぐに独走となってしまいましたが、200㎞走り切りました」とコメント。
イタリアから参戦した世界選V10のパラサイクリスト「アンドレア・プサテリ」
今回、招待選手としてイタリアからパラサイクリストのアンドレア・プサテリも参加。彼はイタリア・パラサイクリング全国選手権で10度の優勝経験を持ち、世界パラサイクリング選手権ではチームリレーで優勝した実績を誇る選手だ。彼は幼少期に右脚を失ったが、「限界は存在しない」という信念のもと、スポーツと創作を続けている。左脚のみで203kmを走破し完走。「玉長公路の景色は世界屈指。山と海が並走する景観は忘れがたい」と語り、大きな拍手が送られた。


スタートセレモニーでは秋田・男鹿からなまはげ太鼓の応援
主催のTCF(中華民国自転車騎士協会)は秋田県男鹿市と長年の交流を続けており、今年は代表団が応援に来訪。前夜祭とスタートセレモニーでは迫力の「なまはげ太鼓」が披露され、会場は熱気に包まれた。「男鹿半島には豊富なサイクリングルートと文化的景観がある。ぜひ走りに来てほしい」と男鹿市からのメッセージも寄せられ、国境を越えた自転車文化の交流が花を添えた。
大会リザルト
男子総合
1位:馮俊凱(Astemo Utsunomiya Blitzen) 5:11:37.98
2位:李冠賢 5:12:18.03
3位:何彥誼(Yilan Cycling Team) 5:12:18.31
山岳賞(男子) 李廷威(Pogi Team Gusto Ljubljana)
スプリント賞 許仕儒(Action Cycling Team)
女子総合
1位:許書瑋(A+ cycling studio) 5:51:19.64
2位:吳玉鳳(EPIC TRCA Team) 6:24:51.66
3位:程秀如 6:24:51.80
山岳賞 許書瑋(A+ cycling studio)
スプリント賞 許書瑋(A+ cycling studio)
団体総合
1位:EPIC TRCA Team
2位:Action Cycling Team
3位:TEAM WAYPOINT
大会公式WEBサイト
https://www.taiwankom.org/
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