
地元兵庫の川口うららが2連覇、沢田時が4回目の日本一達成|マウンテンバイク全日本選手権XCC

Bicycle Club編集部
- 2025年07月19日
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7月19日、第38回全日本自転車競技選手権大会マウンテンバイクが兵庫県たつの市の菖蒲谷森林公園で開幕し、初日のクロスカントリーショートサーキット(XCC)では、地元出身の川口うらら(Team TATSUNO)が女子エリートで2連覇を達成、男子エリートでは沢田時(宇都宮ブリッツェン)が4回目の日本一に輝いた。関西地区初開催となる今大会のXCCは、周長700mのショートコースで熱戦が繰り広げられた。
地元の星・川口うららが貫禄の2連覇達成
女子エリートの注目は、地元たつの市出身の川口うらら(Team TATSUNO)に集まった。小学生の頃からこの菖蒲谷のコースを知り尽くした川口は、持ち前の地の利を活かして見事に2連覇を達成した。
「小学生の時から走っている慣れたコースなのでリラックスしてプレッシャー無く走れたかなと思います」と川口は勝利後のインタビューで語った。「元々考えていたのが下りで差をつけて森で少し後ろの選手を待ってという展開に持って行けたのでよかったですね」
戦術通りの展開でレースを支配した川口だが、明日のクロスカントリー・オリンピック(XCO)への意気込みは特別だ。「XCOはずっと勝てていないので明日が重要です。たつの市の市長やスポンサーの方々、地元で応援してくださる方達、オリンピック前から凄く応援して頂いているので、その恩返しになるレースを明日も出来ればと思っています」
石田唯は雪辱を誓う
2位に入った石田唯(TRKWorsk)は簡潔ながら力強いコメントを残した。「今日は負けてしまいましたが明日は勝てるように頑張りたいと思います」。川口との戦いは明日のXCOでも続く。
末政実緒が地元開催に感動
3位表彰台に立った大ベテランの末政実緒(SANTA CRUZ)は、地元開催の特別な意味について語った。「今回地元の走り慣れたコース、そして普段のどかなこのたつの市、ここが賑わっていて純粋に感動しています」
現役時代にはXCCという競技が存在しなかったという末政。「自分が出場するイメージは正直無かったのですが、地元で全日本が開催された以上、走り方もよく分かりませんでしたが出てみようという気になりました。レースの方は二人が出力差でついていくのがやっとでしたが、なんとか3位は死守できてよかったです」
沢田時が巻き返し、4回目の日本一
XCC最後の種目となった男子エリートは8周回で実施され、スタートから波乱の展開となった。スタートラップでは高橋翔(SPEED of sound)が見せ場を作り観客を沸かせたが、2LAP目からは実力者たちの真価が発揮された。
沢田時(宇都宮ブリッツェン)、北林力(Massi Development Team)、平林安里(TEAM SCOTT TERRA SYSTEM)を中心とした6名の集団が形成され、レースは膠着状態に。しかし6LAP目で沢田が勝負を仕掛けると、それに反応した北林力が先行する展開となった。
最終的に、持ち前の経験と冷静な判断力で沢田時が逆転勝利を収め、XCCチャンピオンの座を獲得した。
沢田時「冷静に走ることができた」
4回目の日本一を達成した沢田時は、今季のXCCでの苦戦を振り返りながらも安堵の表情を見せた。「XCCは今年勝てていませんでしたが、今回冷静に走ることが出来、4回目の日本一となれてよかったですね」
明日のXCOに向けては、「当然優勝を狙って走りますが、今日と全然違うコースになりますし、コースの難易度がかなり高く、コースとの戦いになると思っています。自分を出し切って走りたいと思います」と気を引き締めた。
北林力「明日は本気で行く」
2位でフィニッシュした北林力は、沢田の巧妙な戦術に敗れた悔しさを隠さなかった。「こういうコースは時選手がやはりうまくやられてしまいましたが、明日は僕も負けるわけにはいかないので、明日は優勝目指して本気で行きます」
北林の言葉からは、明日のXCOでの雪辱への強い決意が感じられた。
平林安里「思ったより前に出られなかった」
3位の平林安里は、自身のレース展開について率直な感想を述べた。「今日は3位に終わってしまいましたが、明日につながる走りは出来たかなって思っています。トップ狙ってガンガン攻めて行きたかったんですが、思ったより前に出られなかったのが悔しかったですね」
若手実力派として期待される平林にとって、明日のXCOは真価を問われる重要な一戦となる。
午後のXCO、新たなチャンピオン誕生
男子ユース:北津留新羽が激戦を制す
午後からはクロスカントリー・オリンピック(XCO)が開催され、女子ユースと男子マスターズによる混走で実施された。男子ユースはスタートループ2.1km+周長3.3km×2周の計8.7kmで行われ、激戦を制したのは北津留新羽(Q-MAX)だった。
「今日勝てた要因は、応援してくれたみんなに力づけて貰えた事と、アドバイスも周りからして貰っていたので頑張って自分の力を出し切り勝てたのだと思います」と北津留は勝利の要因を語った。周囲のサポートへの感謝を込めたコメントからは、チームワークの大切さが伝わってくる。
男子マスターズ:岡本紘幸がダブルチャンピオンの偉業達成
男子マスターズは3周回計12.0kmで行われ、XCCに続いて岡本紘幸(NESTO FACTORY RACING)がXCC・XCOのダブルチャンピオンという偉業を達成した。
「一日に2競技ということで展開をどうすればいいのか悩みつつ、2周回目を走っていたときにうまい具合にエンジンかかってきたのでよしこれは行けると思い、そこからは攻めましたよ」と岡本は勝負どころでの判断について振り返った。
「世界3位の走りがこうなんだって言うのを見せつけられたかと自分の中では思っていて、満足できる結果でした」という自信に満ちたコメントからは、世界レベルの実力者としての誇りが感じられる。
8年ぶりの復帰、小野寺健が会場を沸かせる
注目を集めたのは2位に入った小野寺健(OK WORKS)だ。8年ぶりの参加となった小野寺は、スタート時82番ポストという不利なポジションからの力強い走りで会場を大いに沸かせた。長いブランクを感じさせないパフォーマンスは、多くの観客に感動を与えた。
地元たつの市が全力でおもてなし
今回の全日本選手権開催について、たつの市の山本実市長は喜びを隠せない様子だった。「この菖蒲谷で全国大会が出来たことを嬉しく思います。また選手のみなさんにこの菖蒲谷をかわいがっていただきたいですね。何回も来ていただき、練習やいろいろなことに使って頂ければと思っています」
地域活性化への期待も大きく、「本当に我々はこの日を楽しみにしていました。今後とも是非この菖蒲谷森林公園、そして帰りに地元名産のそうめんを食べていって貰えると嬉しいです」と、地元の温かいおもてなし精神をアピールした。
ナショナルチーム監督が語る菖蒲谷の魅力
日本代表のナショナルチーム監督、小笠原崇裕氏は菖蒲谷コースの特徴について詳しく解説した。
「この菖蒲谷は地形を生かして非常にスリリングなコースとなっています。特に下りは非常に速いスピードのコースになっていて、登りも凄くきついんですが、総合力を試されるコースになっており、上り下りのバランスのよいコースだと思います」
コースの技術的な難しさについても言及し、「今回は持久力だけ又はスキルだけでは勝てないので、登りも出来てかつスキルもある選手が上位に来るコースなので、観戦する場合は上り下りが見える場所で見て貰いたいなと思ってます」と観戦ポイントをアドバイスした。
選手育成への思い
小笠原監督は、今大会を選手強化の重要な機会と位置づけている。「ナショナルチームコーチとしては登りも下りもスキルのいるコースで、しっかりと自分の弱いところとか把握して貰って、より高見を目指して貰えるように、自分の苦手なところをこの先伸ばしていけるように、今回走って終わりではなく次に生かして貰えるように」
「強化としても順位だけで無く走りを見て次につなげるように育てていきたいと思っています」という言葉からは、日本のマウンテンバイク界の未来を見据えた長期的な視点が感じられる。
会場を盛り上げたMCコンビ
大会を通じて会場の雰囲気作りに一役買ったのが、MCリアル関西の顔とも言えるMCシンジとMCアケによる実況だった。選手の紹介から実況まで、観客と選手を繋ぐ重要な役割を果たし、大会全体を盛り上げた。
関西地区初開催の意義
全日本自転車競技選手権大会マウンテンバイクが関西地区で初開催されたことは、西日本のマウンテンバイク競技普及にとって大きな意義を持つ。これまで中部地区での開催が多かった全日本選手権が関西で行われることで、より多くの地元ファンが生でトップレベルの競技を観戦できる機会となった。
菖蒲谷森林公園のコースは、自然の地形を活かした本格的な設計で、選手たちからも「技術的で面白い」「総合力が試される」などの高い評価を得ている。XCCでは周長3.3キロのコースが使用され、明日のXCOではさらに長距離のコースでの戦いが予想される。
明日のXCOへ向けて
初日のXCCでは各選手の調子や戦術の傾向が明らかになったが、明日のクロスカントリー・オリンピック(XCO)は全く違った展開になることが予想される。
女子エリートでは、地元の川口うららが「XCOはずっと勝てていない」と語った通り、より長距離でのレース運びが鍵となる。石田唯との一騎打ちに加え、大ベテランの末政など他の有力選手も巻き返しを図ることは確実だ。
男子エリートでは、沢田時の連覇なるか、それとも北林力や平林安里が雪辱を果たすのか。XCCとは「全然違うコース」になるという沢田のコメント通り、より持久力と総合力が問われる戦いになりそうだ。
各カテゴリーの充実した戦い
今大会では、男子・女子ユース、ジュニア、マスターズなど幅広いカテゴリーでレースが実施された。特に地元開催ということもあり、普段は全日本選手権への参加機会が限られる関西圏の選手たちにとって、貴重な経験の場となっている。
若手選手の育成という観点からも、ナショナルチームコーチの小笠原氏が強調した通り、この大会での経験が将来の日本マウンテンバイク界を支える礎となることは間違いない。
地域とスポーツの理想的な関係
今回の菖蒲谷での全日本選手権開催は、地域とスポーツが理想的な関係を築いた好例と言える。地元出身の川口うらら選手の活躍が地域の誇りとなり、同時に地域が選手を全力でサポートする構図は、スポーツ振興の模範的なモデルだ。
たつの市長のコメントにも表れているように、この大会をきっかけに菖蒲谷森林公園がマウンテンバイク競技の聖地として発展し、継続的に選手たちに愛される場所になることが期待される。
観戦時の注意点
現地参戦を考えている方は、足元が悪い場所もあるため歩きやすい服装を心がけ、防虫対策と水分補給できる準備を忘れずに行うことが重要だ。自然豊かな菖蒲谷森林公園でのレース観戦を安全に楽しむためには、事前の準備が欠かせない。
明日の大会2日目では、さらに多くのドラマが生まれることは確実だ。地元の星・川口うららの連覇なるか、そして男子エリートでは誰が新たな王者となるのか。地元の星の活躍、ベテランの貫禄、若手の躍動、そして復帰選手の感動など、多くのドラマを生み出し、記念すべき大会として歴史に刻まれることになりそうだ。
XCCリザルト
男子エリート(8周回・5.6km)
1位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) 14分27秒
2位 北林力(Massi Development Team) +7秒
3位 平林安里(TEAM SCOTT TERRA SYSTEM) +13秒
女子エリート(7周回・4.9km)
1位 川口うらら(Team TATSUNO) 15分11秒
2位 石田唯(TRKWorks) +13秒
3位 末政実緒(SANTA CRUZ) +1分37秒
男子ジュニア(7周回・4.9km)
1位 松山海司(Sonic Racing) 12分54秒
2位 野嵜然新(RACING TORQUE) +3秒
3位 中仙道侑毅(FUKAYA RACING) +6秒
男子マスターズ(7周回・4.9km)
男子マスターズ 35+
1位 岡本紘幸(NESTO FACTORY RACING) 14分15秒
2位 皿谷宏人(エキップ ティラン) +16秒
3位 島田真琴(ペダル) +59秒
男子マスターズ 40+
1位 大賀道博(615 六甲朝練/輪心わごころ)
2位 古郡今日史(minzuuBike)
3位 和田良平(Team RingoRoad)
男子マスターズ 50+
1位 國井豊(AX MTB team)
2位 坂本泰崇(CLICK八幡)
3位 山﨑武司(ライドファクトリー)
女子マスターズ(2周回・1.4km)
1位 北島優子(パワースポーツ シック) 5分53秒
2位 広瀬由紀(ボンシャンスACA) +5秒
女子ジュニア(5周回・3.5km)
1位 寺本彩玖子(and more) 15分5秒
女子ユース(5周回・3.5km)
1位 小林碧(AX MTB team) 12分25秒
2位 原みらい(白馬マウンテンバイククラブ) +39秒
3位 藤森未空(Dream Seeker Jr. Racing Team) -2周回
男子ユース(7周回・4.9km)
1位 横山拓生(高知CTC) 14分42秒
2位 今泉蒼人(Q-SHU UNION CJ UNIT) +39秒
3位 田中遼介(Sonic Racing) -1周回
XCOリザルト
男子ユース(2周回・8.7km)
1位 北津留新羽(Q-MAX) 33分49秒
2位 郷津輝(Dream Seeker Jr. Racing Team) +59秒
3位 横田壮一郎(Fine Nova LAB) +1分37秒
男子マスターズ(3周回・12km)
男子マスターズ 35+
1位 岡本紘幸(NESTO FACTORY RACING) 49分22秒
2位 小野寺健(OK WORKS) +44秒
3位 皿谷宏人(エキップ ティラン) +45秒
男子マスターズ 40+
1位 山本和弘(CANNONDALE) 50分20秒
2位 大賀道博(615 六甲朝練/輪心わごころ) +4分52秒
3位 塚本仁志(615 六甲朝練) +6分27秒
男子マスターズ 50+
1位 吉元健太郎(チーム鳴木屋) 52分55秒
2位 大原満(Aisan Cycling Club) +4分26秒
3位 倉淵隆司(Geeks) +5分9秒
男子マスターズ 60+
1位 酒居良和(マウンテン☆ポテト) 1時間1分52秒
2位 増田謙一(acu-power Racing Team) +56秒
3位 澤田泰征(VOLCAオードビーBOMA) +1分14秒
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- CREDIT :
- 編集:相原晴一朗 現地レポートと写真:井上和隆
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