
新城幸也の献身アシストでクアルトゥッチが優勝! 東京・多摩を駆け抜けたTHE ROAD RACE TOKYO

せいちゃん
- 2025年07月13日
INDEX
2025年7月13日(日)、東京2020オリンピックのレガシーイベントとして「THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2025」が開催された。メインレースとなる男子エリートはUCI公認の国際レース(UCIアジアツアー1.2)として実施された。国内外の強豪17チームが参戦し、武蔵野の森公園からJR青梅駅前までの133.8kmで熱戦が繰り広げられ、ロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イタリア)が優勝を飾った。
レースは東京2020オリンピック・パラリンピックの自転車ロードレース競技のコースの一部を活用し、そのレガシーを未来に繋ぐことを目的として開催された。武蔵野の森公園をスタートした選手たちは、調布市、三鷹市、府中市など13の市を通過し、終盤は青梅市の1周約17km、獲得標高約300mの起伏に富んだ周回コースを4周する難易度の高いレイアウトに挑んだ。
新城幸也率いるソリューションテック・ヴィーニファンティーニが優勝候補筆頭

今大会には、UCIプロチームのソリューションテック・ヴィーニファンティーニが参戦し、大きな注目を集めた。チームには日本のエース新城幸也のほか、グランツールでのステージ優勝経験を持つヴァレリオ・コンティやクリスティアン・ズバラーリ(ともにイタリア)など実力者が名を連ね、優勝候補筆頭と目されていた。

対する国内勢も、JCLチーム右京、宇都宮ブリッツェン、キナンレーシングチームなどトップチームが揃い、国内外の力の差を測る格好の舞台となった。
序盤から激しい攻防、14名の強力な逃げ集団が形成


レースは武蔵野の森公園をスタートし、約10kmのパレードランの後、東京2020オリンピックと同じく府中市の是政橋を越えた地点でアクチュアルスタート。序盤から武山晃輔(宇都宮ブリッツェン)や山本元喜(キナンレーシングチーム)らが積極的にアタックを仕掛けるが、集団はこれを許さず、逃げと吸収を繰り返すハイペースな展開が続いた。
中盤の南大沢駅前に設定された1回目の中間スプリントポイントをカーター・ベトルス(ルージャイ・インシュアランス、オーストラリア)が獲得。その後レースが落ち着きを見せ始めると、新城幸也、今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)、山本大喜(JCLチーム右京)らを含む14名の強力な逃げ集団が形成された。
JR青梅駅前に設定された2回目の中間スプリントポイントでは、逃げ集団でのスプリント争いとなり、マレーシアチャンピオンのヌルアイマン・ロスリ(トレンガヌサイクリングチーム、マレーシア)が獲得した。
青梅周回コースで集団が完全崩壊

レースの勝負どころとなったのは、1周約17km、獲得標高約300mの青梅周回コース。最大勾配15%を超える厳しい登りが選手たちを苦しめ、集団は完全に崩壊。サバイバルレースの様相を呈した。
山岳ポイントでは、沢田時(宇都宮ブリッツェン)が1回目と2回目を連続でトップ通過し、山岳賞ジャージを大きく引き寄せた。
新城のアシストでクアルトゥッチがアタック成功

レースが動いたのは3周目。逃げ集団のペースをコントロールしていた新城幸也が、KOM(山岳ポイント)手前の登りで強力な牽引を開始。チームメイトのために集団を削る完璧なアシストを見せると、その動きに合わせてロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イタリア)が満を持してアタックした。
この鋭いアタックに反応できたのは、41歳のベテラン、ベンジャミ・プラデス(VC福岡、スペイン)のみ。2人の逃げ切り体制が築かれた。

心理戦を制したクアルトゥッチが勝利
クアルトゥッチとプラデスの2人は協調して後続との差を広げ、最終周回に突入。しかし、後方からもう一人ソリューションテック・ヴィーニファンティーニのキリロ・ツァレンコ(ウクライナ)が単独で猛追を開始した。
残り3km地点付近で、クアルトゥッチがツァレンコの接近に気づくと、レースは一気に心理戦へ。クアルトゥッチは先頭交代を拒否し、プラデスに脚を使わせる作戦に出た。プラデスは2対1の不利な状況を避けるため、単独でペースを上げて逃げ切りを図るが、クアルトゥッチは冷静にマークを続けた。

最後はフィニッシュ前のスプリント勝負となり、脚を溜めていたクアルトゥッチがプラデスを圧倒。力強くガッツポーズを決め、見事優勝を飾った。2位には粘りの走りを見せたプラデス、3位には猛追したツァレンコが入り、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニが圧巻のワンスリーフィニッシュを達成した。
沢田が山岳賞獲得、日本人最高位の4位
山岳賞は沢田時が獲得し、日本人最高位となる4位でフィニッシュした。沢田は「山岳賞はスタート前はあまり狙っていなかったが、逃げの中でチャンスがあったのでうまくいった」とコメント。「TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)で一度山岳賞を逃した経験があったので、その悔しさを晴らせた」と喜びを語った。
5位には入部正太朗(シマノレーシング)が入り、「久しぶりに逃げ切りの感覚を思い出すことができた。やっぱり逃げが好きだと改めて感じた」とレースを振り返った。
優勝者クアルトゥッチ「新城選手の素晴らしいアシストがあったからこその勝利」
優勝したロレンツォ・クアルトゥッチは、イタリア・サン・ジュスティーノ出身の26歳。2022年に現チーム(当時はコラテック・セライタリア)でプロデビューし、パンチャーとして活躍。今シーズンはツアー・オブ・タイランドの第4ステージでプロ初勝利を挙げていた。
クアルトゥッチは勝利後のコメントで「とても嬉しい。チームとしても、個人としても最高の勝利だ。日本でのレースは初めてだったので、本当に特別な気持ち」と喜びを表現。「終盤は、特に新城選手に感謝したい。自分が調子が良いからアタックしていいかと相談すると、全面的に協力してくれた。彼の素晴らしいアシストがあったからこその勝利だ」と新城への感謝を述べた。
新城幸也「有言実行でよかった。ヨーロッパのレベルを日本チームに刺激として与えたかった」
アシストでチームメイトの勝利に貢献し19位でゴールした新城幸也は「有言実行でよかった。今日の目的はチームから優勝者を出すことで、誰が勝ってもよかったが、展開としてもうちの勝ちパターンになった」とコメント。
新城は「クアルトゥッチと話して、彼が『残り2周の登りで行きたい』と言うので、そこまでできるだけ僕の仕事をした。彼を信用していたし、見事にアタックを決めてくれた」と振り返り、「ヨーロッパのレベルはこれぐらいだということを、日本のチームにも刺激として与えたかった」と今回の参戦意義を語った。
女子エリートは小林あか里が全日本チャンピオンの力を発揮


青梅周回コースを2周する33.5kmで開催された女子エリートレースでは、序盤から東京2020オリンピック日本代表の金子広美(三重県自転車競技連盟)と全日本チャンピオンの小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム)が抜け出す展開となった。

2人は最後までデッドヒートを繰り広げたが、最後はスプリントで小林が金子を振り切り、優勝を飾った。小林は「ベテランの金子選手は登りがとても強く、自分もかなりいっぱいいっぱいだった。最後のスプリントは五分五分かなと思いながら、一か八かで先に仕掛けた」とレースを振り返った。
小林は「私の最大の目標は、ツール・ド・フランス・ファムを走れる選手になることなので、そこに行けるように一つ一つしっかり積み重ねて頑張っていきたい」と今後の目標を語った。
リザルト
男子エリート(133.8km)
1位 ロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イタリア) 2時間46分29秒
2位 ベンジャミ・プラデス(VC福岡、スペイン) +3秒
3位 キリロ・ツァレンコ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、ウクライナ) +24秒
4位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) +1分12秒
5位 入部正太朗(シマノレーシング)
6位 エリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島、オーストラリア)
7位 今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)
8位 カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュアランス、オーストラリア)
9位 久保田悠介(ヴィクトワール広島) +1分15秒
10位 山本大喜(JCLチーム右京)
スプリント賞
カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュアランス、オーストラリア)
ヌルアイマン・ロスリ(トレンガヌサイクリングチーム、マレーシア)
山岳賞
沢田時(宇都宮ブリッツェン)
ヤングライダー賞
ジェラルド・レデスマ(VC福岡、スペイン)
女子エリート(33.5km)
1位 小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム) 56分17秒
2位 金子広美(三重県自転車競技連盟) +1秒
3位 渡部春雅(Liv Racing Japan) +56秒
4位 阿部花梨(イナーメ信濃山形)
5位 鈴木友佳子(MIVRO) +1分18秒
6位 川口うらら(TEAM TATSUNO) +2分45秒
7位 竹内清子(VELONUTS RACING TEAM) +2分46秒
8位 武田和佳奈(Promotion x Athletes Cycling) +2分47秒
9位 福山舞(湾岸サイクリング・ユナイテッド) +2分58秒
10位 遠藤杏奈(High Ambition Cycling Academy) +3分2秒
山岳賞
小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム)
敢闘賞
金子広美(三重県自転車競技連盟)
SHARE
PROFILE

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている