
登山ガイド・大久保由美子さん「 情熱を傾けたぶん、山は裏切らない」|山のガイド名鑑 File.8
ランドネ 編集部
- 2026年05月03日
ガイドの世界で活躍する人々にフォーカスする連載。第8回は登山ガイドの大久保由美子さんをインタビュー。
若くしてヒマラヤに傾倒したのち、子育てに専念。その時々、形を変えながらも、ずっと山に向かい続けた。40代半ばにガイド資格を取得後、徐々に軸足を置き始めたいまだからこその姿を見せてもらった。
山はすばらしい 山はずっと傍らにある
ーー長年登山を続けるなかで、ガイドになったきっかけは?
大久保さん:友人がMJリンクのサポーターに誘ってくれたことです。MJリンクは、田部井淳子さんが呼びかけ人となり女性たちを山に誘(いざな)うサークルでしたが、これを機にガイド資格も取得しました。2012年、43歳のときです。
さらに遡ると、2003年に私が始めた「からっぽクラブ」というサークルになります。同世代の女性たちを山に誘い、山の魅力をともに味わいたいという思いで始めたもので、田部井さんの理念と重なるものがありました。
ーー出産や子育ての時期もありましたね。
大久保さん:はい。子どもができる前のことですが、乳がんを患ったことも大きなできごとでした。ちょうど、シシャパンマの国際隊に参加したいと思っていて、日本人ひとりでは心細いからと竹内洋岳さんを誘ったんですよね。その矢先に、乳がんが発見され、結局私は参加できませんでした。治療に専念したのちに、マナスルに登りますが、以降はヒマラヤには行っていません。
抗がん剤を服用していた時期は、妊娠ができないと医師に言われ。それまで子どもがほしくなったらいつかできるだろうと思っていたことが、そうではないのだと実感しました。夫とともに家族を作ることを真剣に考えるようになったのだと思います。
ーー子育て中の登山は?
大久保さん:子どもはふたりとも「青空自主保育」に通いました。青空自主保育は自主運営でしたが、専任の保育者がいて、子どもを見守る大切さや信じることを学びました。
振り返ると、青空自主保育の8年間は、そこにいさせてもらえるだけで幸せだったと思います。なんのルールがなくても、子どもたちはクリエイティブに遊んで、自分たちの社会を作っていく。散歩では、少し歩くとなにかを発見して立ち止まる。全然前に進まないけれど、まさに「センス・オブ・ワンダー」の世界であり、子どものもつ好奇心や感性には驚かされます。私はその傍らで、ただただ子どもたちを見つめているだけでしたが、本当にありがたい時間だったし、いまの私を作ってくれていると思います。もちろん、ガイドの仕事にも影響を与えています。
合間をぬって山へも出かけましたが、時間がなかったので、トレランをやるようになりました。走れば早く帰宅できる。家事の時間にも間に合う。そしてトレランは体力維持にも役立ちましたね。

ーーこれからのガイドは?
大久保さん:最近はツアー会社の仕事や個人のガイドをしています。近年、ようやくガイドの仕事に打ち込めるようになって、先輩ガイドたちに出会い、教わることがたくさんあります。新しい学びは楽しいし、勇気づけられることもあります。青空自主保育での時間も、からっぽクラブもMJリンクも、私のなかでは全部つながっています。
家庭や仕事の都合で、思うように山に登れない時期もあるけれど、形を変えながらもずっと山を続けられたのは、山がすばらしいことをわかっていたからです。かつての経験でそれは十二分に知っています。だから、必ず山に戻ってくることができた。山は情熱を傾けたぶん、なんの裏切りもなく、私たちになにかを与えてくれます。登山はすばらしい、そんな気持ちを顧客のみなさんと分かち合えたらうれしいです。
近々の目標は、富士登山競走の山頂コースに出ることです。


大久保由美子さん

1968年、山口県生まれ。小さなころから父に連れられて野山で遊んでいた。23歳、『銀嶺の人』がきっかけで登山に目覚める。ガッシャブルムⅡ、アマダブラム、マナスル(無酸素)などに登頂。カナダのヤムナスカ登山学校へも。ヒマラヤでの経験を経て大学院でフロー理論を学ぶ。
Instagram:@climbery0614
- 資格:日本山岳ガイド協会公認登山ガイドⅡ
- 得意分野:自分ではわからないが、初心者コースの依頼が多い
- 好きな山域:伊豆、箱根の山々、丹沢
- 好きなアクティビティ:トレイルランニング
- アウトドア以外の趣味:音楽、ピアノ、三線
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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