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環境にやさしく、マルチに使える保温アイテム「エバニュー/とろけるキルト」|これからの山道具図鑑Vol.8

コロナ禍を経て、山小屋環境は変化。洗濯、日干しの回数も限られる布団の共用において、感染症対策、清潔さの維持のため、登山者にインナーシーツの持参、使用が求められるようになった。素材はシルク、コットン、メリノウール、フリース、化繊とさまざまだが、寝るときにだけ使用するという用途を広げたのが、今回テストを行なった「エバニュー/とろけるキルト」だ。
それは山小屋だけでなく、テント泊、そしてデイハイクでも使える、使いたくなる保温アイテムとなっていた。

編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉長谷川拓司

動的保温着の定番素材オクタ サーモフライを採用したキルト

 

通気性の高さを、豊かな保温性と両立させたことで、動的保温着の素材として多くのアウトドアブランドが採用しているOcta(オクタ)。糸のまんなかが空洞になっていて、外側には8本の突起が備わった軽量なポリエステル糸だ。空洞部分、突起のすき間に空気を取り込んで断熱、さらには吸湿速乾性も装備。
その性能は従来の化繊素材の中空糸を超え、中綿素材としても使える嵩高をも発揮する。

今回紹介するエバニュー/とろけるキルト(¥19,800)は、そのオクタを使い、表面は平滑、肌面は立毛させたニット素材、オクタ サーモフライを使用している。

出典:帝人フロンティア

 

さて、サラっと読み進めたかもしれないが、この素材は毛羽立たせた「起毛」ではなく、ふたつの編み地のあいだを結ぶオクタ糸をカットして糸が立った状態に仕上げた「立毛」素材だ。
そのため、洗濯耐久性が高く、起毛素材の代表であるフリースのように毛が抜けにくい。つまり昨今の環境課題の、海洋マイクロプラスチック抑制に役立つ素材なのだ。

しかもこのサーモフライに使われるポリエステルは、リサイクル素材。日本の繊維商社の帝人フロンティアが開発したもので、多くのアウトドアブランドが採用する理由は、機能+高い環境性にあるようだ。

動的保温に機能する通気性が快眠に誘う!

とろけるキルトに採用されたオクタ サーモフライは、上画像のとおりにスカスカだ。ダイヤ柄やハニカム柄に編まれた部分は立毛していて暖かそうだが、そのすき間は薄い平織り生地で、呼気を吹きかけると、スゥ~と空気が抜けていくのがわかる。

この通気性のよさが動的保温着としてムレを抑える機能をするのだが、インナーシーツとしては、「冷えるのでは?」と考える人もいるかもしれない。

しかし、実際には、通気をしないほうがムレて、冷えにつながるのだ。

よくいわれることだが、人は睡眠中にコップ1杯、約200ml程度の汗をかいている。それがインナーシーツや寝袋内にこもったままだと、いわゆる汗冷えと同じことが起き、冷える。

たとえば、インナーシーツの素材として軽さと保温力のバランスのよさを装備したシルクは、通気性や肌触りのよさも装備している。私もシルク製インナーシーツを愛用しているが、暑い季節でもサラっとした肌触りで、シルクのもつ通気性、吸汗速乾性が機能。ほのかに温かく、冷えを感じない。

一方でオクタ サーモフライはシルクほどの軽量コンパクトさはないが、しかし保温力は高く、通気性、肌触りのよさは同等レベルに感じられた。商品名に「とろける」とあるが、厚み、やわらかさのある生地は、肌なじみがよく、たしかに肌に「とろける」ようだ。

また気温が下がるほど、接触温感のあるオクタ サーモフライのとろけるキルトは、快適さが増していく。単体使用もありだが、冷える季節は寝袋の快適温度域を広げるブースターの役割を確実に担ってくれる。

また、とろけるキルトは、その形状もよく考えられている。
全体は、キルトと呼ぶ掛け布団形状。背面側が割れているので、温暖な季節の単体使用では、出入りがしやすい。というか、上に掛けるだけでいい。

足元はボックス形状になっていて、寝袋内に足で押し込むように潜り込め、寝袋の足元もボックス形状になっていれば、窮屈さもない。

登山用インナーシーツは、寝袋同様のマミー的な形にしているものが多いが、とろけるキルトは、その形にも山での経験と道具へのこだわりを感じられて、使っていてうれしくなってくる。

 

 

しかも、休憩時に役立つ使い方も可能!

 

上画像、テントから身体を出して、とろけるキルトで上半身を包んでいる。キルト形状なので、オクタ サーモフライの肌面を内側にして、ブランケットとしても使えるのが利点だ。

しかし、キルトで包まなくても上半身は暖かな防寒着を持っている!という場合には、

下半身に掛けてもいいんです。防寒着のジャケットは携帯していても、パンツは持ってきていなかった!というのは、よくあること。とくにデイハイクでインサレーションパンツを持っていくことは、少ないだろう。

上画像はテント内での使用イメージだが、休憩時、ランチや調理時にサッと取り出して寒さを感じる身体の部分を包む。すると、ほんのり暖まる。重さは243g。インサレーションパンツと同等の重量だけれども、履く面倒がない。

ちょっと余裕のある山行のお供に!

上画像は、付属される収納袋に、とろけるキルトを入れた状態。袋には「EVERNEW MOUNTAIN TITANIUM COOKWARE 」とロゴが入っているが、とろけるキルトの収納袋だそう。これはなかなかセンスがいい!

ざっくり18×14×10cmの大きさで、インナーシーツとしてはちょっと大きめだ。

しかし、山で友人たちと飲み食いする時間を楽しんだり、夏山で星を見たり、ご来光を待つあいだ、このブランケットとしても使えるマルチクロスがあれば、間違いなく優しい温かさに包まれるだろう。

私であれば、虫の少ない季節に景色のよい場所で昼寝に興じる際に、包まれたいと思う。ハンモックとの相性もよさそうだ。

というように、山で休む時間をより心地よくしてくれる。これは、いわば「静的保温アイテム」という新たな道具に思えた。

「エバニュー/とろけるキルト」の詳細はこちら

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PROFILE

PONCHO

PONCHO

登山、ランニング、旅、島、料理、道具をテーマに執筆、撮影。低山ハイクとヨガをMixしたイベント『ちょい山CLUB』を主催する。

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