
多摩川で開催したクロスフェス「稲城クロス」 雨を吹き飛ばす熱気と、野中&高岡が制した名物選手権
Bicycle Club編集部
- 2025年12月22日
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12月21日、東京都稲城市の稲城北緑地公園で開催された「稲城クロス」。曇り空に時折雨が混じるコンディションにもかかわらず、会場は400人を超える出走者を集め、熱気に包まれた。今回で11回目を迎えるこの大会は、最大の魅力である “近くて出店が多くて参加しやすい”こと。JR南武線・稲城長沼駅から徒歩10分、中央道稲城ICからも約6分というアクセスの良さは、都心から自走や電車で気軽に参加できる貴重な大会だ。
テクニカルな河川敷コース、初心者から上級者まで

コースは多摩川河川敷を活用した平坦基調のレイアウト。長い直線と連続するコーナーが組み合わされ、オフロード走行の基本動作「曲がる・止まる・走る」を試す設計だ。名物セクション「アミノバイタル・ステアーズ」やシケイン、スロープなど変化に富んだ構成は、初心者に優しく、上級者にはバイクコントロールの精度を問う奥深さを備える。

今年は“ちょっと試してみたい”という超初心者クラスが単独カテゴリーとして成立。初めてのシクロクロス体験を楽しむ参加者の笑顔が印象的だった。

地域とスポーツをつなぐセレモニー には稲城市長も登場

大会の中盤、名物イベント「CX最速店長&社長選手権」の前には、稲城市を象徴するセレモニーが行われた。まず登壇したのは稲城市長・高橋勝浩さん。「稲城は“自転車のまち稲城”を掲げています。こうしたイベントを通じて、市民や来訪者に自転車の魅力を伝え、地域の活性化につなげていきたい」と語り、サイクルツーリズム推進への強い意欲を示した。

続いて、ホームタウンアスリートであり、東京2020パラリンピック金メダリストの杉浦佳子さんが笑顔でエールを送った。会場は温かい拍手に包まれ、地域と競技の絆を感じさせる瞬間となった。
業界人が本気で挑む「CX最速店長&社長選手権」

その後、会場のボルテージは一気に最高潮へ。ショップ店長や業界の社長たちが威信をかけて激突する「CX最速店長&社長選手権」がスタート。今年は、昨年までコーダーブルーム稲城店店長として3連覇を果たし、今年から練馬で「フィールドサイクル」を開業した野中秀樹氏が店長選手権を制覇。

また、漫画『弱虫ペダル』の作者渡辺航先生(総北高校自転車競技部OB)はじめ、解説者としておなじみの栗村修さん(ツアー・オブ・ジャパン)、フォトグラファーの辻啓さん(カレンダー&ミュゼット屋さん)、グランフォンドでは世界チャンピオンにも輝いたことのあるRoppongi Express代表・高岡亮寛さん、なんといっても2022年に編集長選手権で勝利したバイシクルクラブ編集長の山口博久ら、業界の名物選手が出走した社長選手権は大いに注目を集めた。
好スタートをきったのは辻さん、しかし最後尾から追い上げた高岡さんが余力を持ってスパートをかけ、辻さんを振り払い、笑顔で勝利を飾った。

高岡さんは沢山の観客と応援の中で走るのは別格ですねといつも以上に笑顔を見せていた。

高岡さんとハイタッチする2位、辻さん。本気で悔しがっていたが、それだけガチなバトルだったことがわかるレースだった。

レース後に笑顔の5位となった栗村修(右)さんはこの日2レースをこなした。6位となった渡辺航先生(左)。

2022年の編集長選手権ではチャンピオンとなったバイシクルクラブ編集長山口は7位に沈んだ。「体重も増えて、ダイエットからはじめなきゃ」と反省。年明けからまじめにシクロクロスに参戦するとか、しないとか。

レースを別の意味も盛り上げたのはブロンプトンカントリーマネージャーの矢野大介さん。レースこそ8位でフィニッシュしたが階段でブロンプトンを折りたたみ、会場を沸かせるパフォーマンスはさすが! シクロクロスの実力的には一番強い選手だったかもしれない。
CX最速店長選手権優勝 野中店長コメント

「3連覇を達成してきた得意レースですが、今年は6月に自身の店舗を開業したこともあり、新たな気持ちで臨みました。レース中は集中しすぎて周回数を確認しておらず、気づけばゴールで優勝していました。
フィールドサイクルとして初めての優勝ということで、ウィニングポーズは『1』を選びました(昨年は3連覇を記念して『3』)。
表彰式には多くのお客様が駆けつけてくださり、表彰台の一番高い場所から見る景色は格別でした。今年も強敵揃いでしたが、来年はさらに多くの店長さんや店主さんに出場していただき、レースを盛り上げたいと思います。」
稲城市が描く“自転車のまち”モデル

稲城市は、東京2020オリンピックで自転車ロードレースのコースとなったレガシーを活かし、「自転車のまち稲城」を標榜。国土交通省のサイクルツーリズム推進事業「GOOD CYCLE JAPAN」のモデルルートに選定された東京多摩2020レガシーロードを軸に、サイクリングルートの整備やイベント開催を通じて地域の魅力を発信している。
具体的な取り組みとしては:
- サイクルイベントの定期開催:「稲城クロス」をはじめ、初心者から楽しめる体験型イベントを企画。
- 観光資源の活用:五輪ロードレースコースを観光ルートとして整備。
- デジタル活用:スマホアプリによるセルフガイドツアーやE-Bike試走体験を推進。
- インバウンド戦略:欧米系サイクリスト向けガイドツアーを視野に入れ、長期滞在型観光を誘致。
こうした施策は、都市近郊でのサイクルツーリズムモデルとして全国的にも注目されている。
地域振興の理想形として

稲城クロスは、単なる競技会にとどまらず、地域振興とサイクルカルチャーを融合させたイベントだ。初心者からトップアマ、業界人までが一堂に会し、笑顔と熱気に包まれるこの大会は、都市近郊でシクロクロスを楽しむ新しいスタンダードになりつつある。そして、その背景には「自転車のまち稲城」という明確なビジョンがある。次回の開催にも期待が高まる。

リザルト
CX最速店長選手権

1位 野中 秀樹(フィールドサイクル)26分12秒
2位 今井 大悟(YAGI-TAI?)+27秒
3位 向山 浩司(武士道ペイントA-CAP)+54秒
CX最速社長選手権

1位 高岡 亮寛(Roppongi Express)30分14秒
2位 辻 啓(カレンダー&ミュゼット屋さん)+27秒
3位 松橋 圭(サロン フラムルージュ)+38秒
4位 齋藤和也(TeamSOLA)+46秒
5位 栗村修(ツアー・オブ・ジャパン)+48秒
6位 渡辺航(総北高校自転車競技部OB)-1Lap
7位 山口 博久(バイシクルクラブ編集部)-1Lap
8位 矢野大介 Brompton -1Lap
ME2

1位 谷 直亮(Team轍屋)39分25秒1
2位 澤原 翔(TEAM轍屋)+1秒
3位 武田 伊織(内房レーシングクラブ)+12秒
ME3

1位 曽我 啓一郎(cyclistOGGI)28分43秒9
2位 秋田 直樹(なし)+2秒
3位 斎藤 將揮(ASTAMA Cycling Team)+4秒
ME4-A
1位 城所 秀由 29分35秒9
2位 渡邉 太一(チーム轍屋)+27秒
3位 阿部 巧太郎(TEAM轍屋)+36秒
ME4-B

1位 風間 大和(Team Eurasia IRC Tire)28分09秒9
2位 今本 未悠(MOAT RACING LAB)+1分20秒
3位 篠崎 友(モンスター)+1分39秒
WE2+WE3

1位 亀井 萌子 26分17秒4
2位 仲谷 あい(Roppongi Express)+2秒
3位 齋藤 古都美(Team SOLA)+8秒
MM35

1位 越智 進太郎(農林中央金庫)30分24秒4
2位 松島 史秋(コマクサ幼稚園)+1分21秒
MM40

1位 Rommeswinkel Hendrik(コマクサ幼稚園)30分07秒6
2位 亀井 直人 +1分03秒
MM45

1位 金村 健(MIVRO)29分11秒4
2位 影森 信一郎(TRYCLE.ing)+10秒
3位 小林 陽介(播磨坂倶楽部)+3分05秒
MM50

1位 桜井 晋吾(SBC Dirt Union)29分03秒0
2位 給分 淳之助(Team轍屋)+46秒
3位 秋山 純一(-)+57秒
MM55

1位 山本 敦(SBC Vertex Racing Team)30分17秒5
2位 角田 淳志(ROUGHSTONES)+14秒
3位 栗村 修(ツアー・オブ・ジャパン)+27秒
MM60

1位 小坂部 恵一(FAST LANE Racing)24分53秒5
2位 楠田 清徳(MUDlovers)+4秒
3位 豊坂 秀樹(TCI)+10秒
MM65

1位 長 裕(ボルケーノレーシング)25分41秒8
2位 高田 昭(マリア・ローザ)+51秒
3位 島田 修一(クラブ遊輪館)+1分50秒
WM

1位 今井 みち子(なるしまフレンド)26分29秒2
2位 志村 愛(スペシャライズド幕張)+4分03秒
MJ

1位 矢野 柊(八ヶ岳CYCLING CLUB)39分57秒0
2位 増輪 太志(藤沢翔陵高校)+50秒
3位 橋本 竜侍(八千代松陰高校)+2分27秒
MU17

1位 角田 直央(Fine Nova LAB)27分50秒5
MU15

1位 森田 圭 31分27秒9
WU15

1位 奥山 真彩(横浜本牧レーシング)25分51秒2
CK3
1位 小澤 郁篤(さまよえる黄色い弾丸)12分56秒9
2位 渋谷 一(drawer THE CYCLING CLUB)+56秒
3位 城所 信成 -1Lap
CK2
1位 森田 旬 14分40秒0
2位 松村 並季 +14秒
3位 石坂 佳士 -1Lap
CK1
1位 菅原 彩愛(横浜本牧レーシング)14分42秒1
2位 大石 朔太郎(隠密)+1分22秒
3位 梶山 佳那子(シマエナガクラブ)+1分30秒
オープンクラス
1位 中 瑞希 27分35秒4
2位 鈴木 一磨(だいご愛好会)+6秒
3位 松尾 遊(Champion System Japan Test Team)+7秒
超初心者クラス
1位 松本 康雅 14分30秒9
2位 梶山 雄哉(Merida kids club)+0秒
3位 相良 尚哉 +4秒

稲城クロス公式サイト
https://inagicross.tokyo/
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文と写真:井上和隆
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