
燕山荘の”静かなるドン”が語る、コマクサへの深すぎる愛♥️│植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #48

成清 陽
- 2025年08月13日
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登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
さあ今年も絶賛到来中の、夏山シーズン。たぶん、多くの読者がすでに山々へと足を運んでいることでしょう。そこで本連載を担うワタクシとして思い出してほしいのは、高山植物の女王・コマクサ!そして、新たに今年フォーカスするのは「コマクサを愛する人」です。国内有数のコマクサ天国を守り続ける山小屋オーナーに、会いに行ってきました!!
2番目に覚えた花、コマクサ
「今年は本当にコマクサのアタリ年。こんなにすごいのは初めてだね。ダメだよ、もっと早く来なきゃ!」。叱咤激励とともに、温かく出迎えてくれたのは、燕山荘三代目オーナー・赤沼健至さん。父が経営する燕山荘にアルバイトとして入り、そこから半世紀。オーナーとなった彼が愛してやまないコマクサは、母に教わった花だそうです。「『ツボミが馬の顔に似ているからコマクサだよ』と。ピンク色がきれいだし、印象的だったね。でもね、当時は小学1・2年生くらいだったから。最初に覚えたのはやっぱり、チングルマだよね。だってさ、チンがつくから。ははは(笑)」。もうっ、エエ話だと思ったのにぃ~赤沼さん!

巨匠たちと名を連ねる!?名カメラマン
鮮やかなカウンターパンチを披露し、あっさりと取材班を虜にした赤沼さん。そんな彼は、多忙な経営の傍ら、時間が許せばコマクサの撮影に勤しみます。「光の加減は、今なら朝7~8時くらいが最適かな。白い砂地にコマクサの影が映って、動きが出るんだよ。やや逆光で、コマクサの周囲に円形の“玉ボケ”を出せたら、自分で撮影した写真でも感動するよ!」。山岳カメラマン・白籏史朗氏などとも交流があるだけに、こだわりは随所に光ります。ところで、今でこそコマクサ畑に包まれるように建つ、燕山荘。しかし、「以前はこんなにコマクサはなかった」と驚きの事実を明かしてくれました。

地道!コマクサ保護の秘訣
ははぁ、さては地図上に記載のある「コマクサ栽培試験地」が関わっているんですね?と聞くと、赤沼さんは首を振りました。「松本営林署(当時)が旗振り役となって、コマクサを増やそうと二年がかりで種子散布をしたけども、残念ながらほとんど意味はなかった。我々も狩り出されて、大変だったんだけどね(笑)。効果が出たのは、燕特有の流れやすい砂地に登山者が踏み込まないよう、ロープや木杭を設置したこと。こうして、30年ほどかけて山荘周辺にコマクサが増えたんだ。そうこうするうち、かつて公式の生息地から外されていたライチョウも増えて、頻繁に出会えるようになった。やっぱり、『自然のものは、自然のままに』。これに尽きるよ!」。

自然にも、人間にも優しさを
自然を守れるかどうかは、利用者しだい。ゆえに、管理者はどうしても厳しいスタンスが必要になりそうです。でも赤沼さんは、「この山は、何か変わったところがあるでしょう?」と問いかけます。回答に窮していると、「登山道には看板が少ない。マナーは守ってほしいけど、強制したくないんだ」というひと言。せっかくの山を楽しんでほしいからこそ、なるべく声掛けはせず、景観を乱す人工物を置かない。山小屋でも同様、ご飯の時間ですら放送を控え、登山者のプライベートに配慮する……。そんな工夫が、燕山荘のファンをつくってきたのです。思いがけず垣間見えた、山男の優しさに思わずホロリとさせられちゃいました!!

多くの人に響け!オーナーの情熱
赤沼さんは、夕飯時にスライドトークとアルプホルンの演奏を行なっています。これもやはり、コマクサをはじめとする自然を守るための努力でした。「もう40年近く続けてるかなあ。『静かにメシ食べたいのに』っていう人もいるし、『すごく良い』っていう人もいる。どうすればいいんだろうね!?」。軽快に笑い飛ばす赤沼さんですが、お話が始まれば、四季折々の美しい写真とユニークな語り口に、どよめきと笑顔がこぼれっぱなし。“山上のダム”である雪の激減なども定点写真で示し、シリアスな話題も織り込みます。長年にわたる努力は人々の心を打ち、「自然を大切にしたい」という情熱が、ひしひしと伝わっていました。むろん、ワタシにも、です!!

オーナーのオススメは、7月上旬まで!
あまりに地道な取り組みを経て、コマクサに抱かれる燕山荘。ところで、美しいコマクサを見るなら、いつ頃が良いのでしょうか?赤沼さんは、穏やかな笑顔で教えてくれました。「コマクサの開花期が10日~2週間ほど早まっていて、近年は6月下旬から7月上旬が、もっともみずみずしい季節。海の日前後には大きな株で迫力が出てきて、8月まで咲いているよ。ここは、アルプスの女王・燕岳と高山植物の女王・コマクサ、ふたつの女王がマッチングする、最高の山。日本でもトップレベルの場所だよ!!」。言葉の端々から感じられる赤沼さんの愛情に触れて、うっかりこう誓ってしまいました。「来年は絶対、咲きたてホヤホヤのコマクサを見に来ます!」。

さてさて、今回ご紹介してきた、「コマクサを愛し守る人」。初めて赤沼オーナーにお会いしましたが、いやホント、絶対来年は超みずみずしいコマクサのお花畑に包まれたい!そして、残雪期や紅葉など、さまざまな季節の燕に必ずやお邪魔したいと思いました。さて、この取材のようすは来年春or夏号の本誌誌面でも、しっかりとお伝えする予定。まだまだ深い赤沼さんの想いを中核にする山岳ルポ、ぜひ誌面でご覧いただけたらと思います!
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
今回の山旅
〈1日目〉
14:00 JR松本駅
14:39 JR穂高駅
14:50 休暇村リトリート安曇野ホテル・送迎バス
宿泊
〈2日目〉
05:25 温泉公園北口(ホテル裏)
05:46 中房温泉
※路肩崩落に伴い、中房温泉行き定期バスの運行状況が変わっています。詳細はコチラから。
06:30 中房温泉~第一ベンチ~第二ベンチ~合戦小屋~燕山荘
14:30 燕山荘到着
18:00 夕食
〈3日目〉
05:40 朝食
06:30 燕山荘~北燕岳~燕山荘
燕山荘周辺散策
10:30 燕山荘~合戦小屋~第二ベンチ~第一ベンチ中房~温泉
17:00 穂高駅
休暇村リトリート安曇野ホテル
信州プレミアム牛や信州サーモン、地場産きのこといったグルメや温泉はもとより、アウトドアに精通するスタッフたちとの触れ合いも楽しいお宿。穂高駅からホテル、ホテルから中房温泉へのアクセスもよく、アルプス山行の前後泊に、ぜひ!!



休暇村リトリート安曇野ホテル
長野県安曇野市穂高有明7682-4
TEL0263-31-0874
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